自由曲面にプリントする「3次元プリンタ」はどう動く?

 暗がりの中に鎮座するのは,ミマキエンジニアリングと長野工業高等専門学校が共同で開発したインクジェット・プリンタの試作機だ。とはいっても,ただのプリンタではない。自由曲面上に直接,プリントできる「3次元プリンタ」である。右の写真の左上に四つ並んでいるのがプリントヘッド,その右斜め下にある銀白色の円形がワーク(プリント対象物,実物は半球状)だ。

 従来,立体物の表面にプリントする方法としては,平面に展開した状態でプリントしてから立体物として組み立てたり,プリントした短冊状のシートを張り付けたりするのが一般的だった。これに対し3次元プリンタであれば,2次元に展開できない硬い材質にもプリントできるし,張りつける手間も要らない。例えば,半球状の樹脂製ワークから地球儀の北半球部分を完成させるのをたった1工程で済ませられるのだ。ヘルメットや自動車の内装部品などへの応用も考えられるという。

 さて,この3次元プリンタではどのようにしてプリントヘッドとワーク表面との位置関係を制御しているのか? 通常のインクジェット・プリンタであれば,紙とプリントヘッドをそれぞれ1軸で動かし,2次元平面上を走査する。3次元の自由曲面上を走査するには果たして…

 ちなみに,プリントヘッドには既存のプリンタと同じものを使用しており,左上に掲載した地球儀では解像度が600dpi,プリント時間が約20分だった。写真の試作機は待機状態で,プリント開始時にはワークとプリントヘッドが近付き,プリント中は両方とも動く。精度向上と時間短縮を両立させるその動きと機構を想像して頂きたい。