“地の利”が生んだハイテク織物の役割とは…

 絹の柔らかさと,金属の光沢を併せ持つこの布は,絹糸の経糸と,ステンレス(SUS)製ワイヤの緯糸から成る。村田製作所と,ネクタイなどを製造する絹 織物メーカーの財木(本社京都市)が共同で開発した。京都の伝統産業である西陣織の技術によって実現したことから通称「西陣フィルター」という。

 この布を織るには,1mや1.5mと広い幅の生地を織れて,なおかつ「細い糸をこなしやすい」(財木代表取締役の財木祥次氏)レピア式と呼ぶ織機を使 う。ジャカードという開口装置で経糸1本1本を上げ下げして緯糸の通り道を作り,そこに直径30μmのワイヤを通していく。その細さは,絹糸が太く感じら れるほど。手でも容易に切れるワイヤを「切れないように,密度を細かくして織るのが難しかった」(財木氏)といい,適正なテンションや速度を模索した。し かも,ある用途で機能させるには,単に織物として仕上げるだけでなく繊維の密度や太さ,平行度を最適化する必要があった。

 ジャカードを最初に取り入れた産地,西陣の財木。清水焼にルーツを持つ村田製作所。京都という“地の利”を生かして開発されたこの布の役割とは…。

この布の役割とは…。