十五代大西浄心作「松地文真形釜」。東山魁夷が描いた下絵を地文にした作品。茶釜においては、時代を代表する絵師が描いた下絵を用いることも多い。
十五代大西浄心作「松地文真形釜」。東山魁夷が描いた下絵を地文にした作品。茶釜においては、時代を代表する絵師が描いた下絵を用いることも多い。

 釜に関していえば、近世、工業的手法によって金属性の鍋や釜が極めて安価に量産できるようになり、これも昔ながらの手法を墨守する釜師にとって大きな打撃となった。こうした事情もあり、釜師はどんどん数を減らしていく。かつて釜師の一大集積地であった三条釜座でも、そこに残る釜師は大西清右衛門のほかは一軒のみになってしまったのだという。時代によって篩いに篩われた一握りの釜師によって、ようやく茶の湯釜の命運は保たれているのである。
(文中敬称略)