「釜」第1話『朽ちゆく様を味わう』

茶の湯に使われる釜は、数百年にわたり作られ続けて来た。江戸初期から十六代続いて来た釜師、大西家の歴代の作品を並べていくと、茶の湯釜の歴史の分厚さと形状や鉄肌などのバリエーションの豊かさを端的に感じ取ることができるだろう。初代大西浄林作「笠釜(時雨釜)」(以下特に表記のない釜は大西清右衛門美術館蔵)。
形あるもの必ず滅す、という言葉がある。どんなものでも逃れ得ないこの真理に、古来人々は人智をもってあらがってきた。例えば秦の始皇帝。自らの命が永遠に続くことを切望した帝は、東方に不老不死の薬があると進言した徐福に海を渡らせ、採取してくるよう命じる。しかし、大勢の部下を引き連れて日本に上陸した徐福は帰還することなく、そのまま日本に居着いてしまった。そんな彼の帰りを待ちわびたまま、始皇帝は齢51にして死去し、秦はほどなく崩壊を迎えるのである。
不滅を願った絶対権力者が望みを託した島国には、もとより不老不死の薬などなかった。それどころか、そこに住む人々は後世、ものが滅していくことを必然として受け入れ、その様をいつくしむという世界でも稀な美意識を創出するのである。「侘び」「寂び」といった言葉で表現される、ものが時代を経て古びた様に美を見出す世界観である。
バックナンバー
- 「釜」第6話『引き継ぐ者の覚悟』 2010/08/26
- 「釜」第5話『「分かっている」なんて言えない』 2010/08/19
- 「釜」第4話『作れるという幸福』 2010/08/12
- 「釜」第3話『作為に非作為を重ねる』 2010/08/05
- 「釜」第2話『錆びるけど錆びない鉄』 2010/07/29
- 「釜」第1話『朽ちゆく様を味わう』 2010/07/22
- 「表具」第5話『美の守護者として』 2010/02/18
- 「表具」第4話『一番厳しい店の一番厳しい師匠』 2010/02/11
- 「表具」第3話『「手が決まる」ということ』 2010/02/04
- 「表具」第2話『残しつつ、補いつつ』 2010/01/28
- 「表具」第1話『床の間にテレビという現実』 2010/01/21
- 「日本刀」 第6話 『創作ということの、本当の意味』 2009/09/24
- 「日本刀」 第5話 『下手ということ、上手ということ』 2009/09/17
- 「日本刀」 第4話 『頂上へ至る道はひとつではない』 2009/09/10
- 「日本刀」 第3話 『伝承したいからこそ手で作る』 2009/09/03
- 「日本刀」 第2話 『今なお底知れない鉄のナゾ』 2009/08/27
- 「日本刀」 第1話 『最も強く、美しい武器』 2009/08/11
- 「和紙」 第6話 『紙漉きになるつもりじゃなかった』 2009/07/02
- 「和紙」 第5話 『機械を入れてみたけれど』 2009/06/25
- 「和紙」 第4話 『水を嫌い、水に頼る』 2009/06/18
記事中に誤りなど,編集部へのご連絡にはフッターのご意見/ご感想・お問い合わせをお使いください。














