形あるもの必ず滅す、という言葉がある。どんなものでも逃れ得ないこの真理に、古来人々は人智をもってあらがってきた。例えば秦の始皇帝。自らの命が永遠に続くことを切望した帝は、東方に不老不死の薬があると進言した徐福に海を渡らせ、採取してくるよう命じる。しかし、大勢の部下を引き連れて日本に上陸した徐福は帰還することなく、そのまま日本に居着いてしまった。そんな彼の帰りを待ちわびたまま、始皇帝は齢51にして死去し、秦はほどなく崩壊を迎えるのである。
不滅を願った絶対権力者が望みを託した島国には、もとより不老不死の薬などなかった。それどころか、そこに住む人々は後世、ものが滅していくことを必然として受け入れ、その様をいつくしむという世界でも稀な美意識を創出するのである。「侘び」「寂び」といった言葉で表現される、ものが時代を経て古びた様に美を見出す世界観である。