前回に続き,太陽電池関連企業が集積している中国・江蘇省の現地取材レポートをお届けする。今回は,中国の最大手である中国Suntech Power Holdings Co., Ltd.(尚徳太陽能電力公司)と,江蘇省南通市にあるSi系太陽電池メーカーの中国Solarfun Power Holdings Co., Ltd.(江蘇林洋新能源有限公司)の訪問取材内容を紹介する。

Suntech Power Holdings Co., Ltd.(尚徳太陽能電力公司)

概要

 江蘇省無錫市に位置するSuntech社は,2001年9月の創業から急成長した中国一の太陽電池メーカーである。2005年12月にはニューヨーク証券取引所に上場し,2008年には生産量でシャープを抜いて世界第3位の497.5MWに達した。

 創業者であり取締役会長および最高経営責任者(CEO)の施正栄(Zhengrong Shi)氏は,今や中国太陽電池産業の顔として活躍している。同氏はオーストラリアのNew South Wales大学で、薄膜太陽電池の研究者を専攻し,中国に戻った後にSuntech社を立ち上げた。技術開発も積極的に進めており,「Pluto技術」で結晶系セルの変換効率20%を目指す。薄膜Si系に関しては市場動向を見ながら開発を進めており,2010年に量産開始する予定である。

 最近は,中国国内の太陽光発電施設にも積極的に納入を進めている。上海万博の中国館にSuntech社の太陽電池パネルが採用されたことは有名である。

 薄膜太陽電池に対する取り組みも進めている。2009年7月には試作に成功しており,50MWの生産ラインも建設中である。2010年から量産開始する予定である。ただ,現在は薄膜太陽電池のコスト競争力が低下していることから,本格的な量産に関して同社は慎重な姿勢を取っている。

展示ルームと太陽電池セル生産ラインを見学

 筆者らは,まず,展示ルームで同社の技術や応用製品などの展示品を見学した。その後,太陽電池セル生産ラインを見学した。セル生産ラインの写真撮影は許されなかったが,同社のウェブ・サイトにその一部が掲載されている。以下に,Suntech社が説明した内容を簡単にまとめる。

(1)2008年の生産能力は1000MW,売上高は540億人民元である。2010年は生産能力2500MW,売上高1500億人民元を目標としており,2012年には生産能力を5000MWに引き上げることを目指す。

(2)現状の太陽電池セルの変換効率は,単結晶型で18.8%,多結晶型で17.2%である。今後は変換効率20%を目指したPluto技術の開発を進めていく。Pluto技術は,New South Wales大学(オーストラリア)で開発された「PERL(Passivated Emitter and Rear Locally-diffused)技術」に基づいている。Pluto技術では,セル表面の配線パターンを微細化することで受光量を増やしたり,セル表面での光の反射を抑えたりするといった技術を採用している。

(3)製造コストの推移と目標値は,2007年が2.5米ドル/W,2010年が1.5米ドル/W,2012年が1.0米ドル/Wである。

Suntech社
Suntech社の展示ルームの一部