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成長する大学発ベンチャー企業を実践しています《訂正あり》

ナノエッグ 代表取締役社長 大竹秀彦氏

丸山正明=日経BPプロデューサー
2010/06/23 09:00
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 現在、1600社以上が活動しているとみられている大学発ベンチャー企業の中で、元気のいい企業を見つけることは難しい時期になっている。ベンチャー企業の育成を担うキャピタル(VC)などの金融機関などがベンチャー企業への投資を大幅に収縮したのが一因だ。特にリーマンショック以降は、大学発ベンチャー企業の中では、研究開発成果をそれなりに上げていたとしても、事業投資に必要な追加資金を集められない情況に陥っている。

 こうした“ベンチャー企業冬の時代”に、新製品発表を繰り返している元気な大学発ベンチャー企業がナノエッグ(川崎市)だ。

 同社は2010年6月3日に製造販売している化粧品「MARIANNA」シリーズに新製品を加え、さらに従来品の一部を「抗酸化効果が期待できる有効成分を加えたり増やしたりする一方で、価格は引き下げるリニューアルを実施する」と発表した。この化粧品の名前からも分かるように、同社は聖マリアンナ医科大学の研究成果を基に創業したベンチャー企業である。この新製品やリニューアルによって、当該化粧品の「売り上げ倍増を狙う」という。大学発ベンチャー企業でありながら、売り上げが立つ事業を実践しているところに、同社の強みがある。

 ナノエッグは化粧品の事業化を目指しているだけの企業ではない。事業内容は、機能性化粧品事業と医薬品事業、第三の新規事業などであり、ポートフォリオをしっかり組んだ事業計画を持っている。創業後に、研究開発費や事業投資費の重い負担に耐えて、追加投資集めに苦慮している大学発ベンチャー企業が多い中で、同社はまず化粧品という製品を実用化して販売し着々と収益を上げ、成長路線を歩んでいる数少ない大学発ベンチャー企業である。

 その理由は、研究開発は創業者の一人である研究開発本部長取締役の山口葉子氏が受け持ち、事業計画などの経営は代表取締役社長の大竹秀彦氏が受け持つとの役割分担がはっきりしているからだ。この経営体制の下に、現実的な事業戦略に基づく成長戦略を描き、着々と実行している。

 その事業戦略の立案を担う大竹氏は、自分の人生設計の戦略を立て、着々と実行してきたイノベーターでもある。大学発ベンチャー企業の社長という道を選んだ大竹氏に、その生き方の面白さを聞いた。

化粧品「MARIANNA」シリーズ
化粧品「MARIANNA」シリーズ

 ナノエッグは2010年に入って化粧品「MARIANNA」シリーズの新製品を2月と6月にそれぞれ発表するなど、化粧品事業を活発化させている。同時に、同社が進める事業の基盤技術となる、国内出願した基本特許「多価金属無機塩被覆レチノイン酸ナノ粒子の製造方法および当該製造方法により得られたナノ粒子法」が2009年12月11日に成立したと発表し、知的財産戦略を一層加速させ、経営基盤を固めている。

 同社は2006年4月6日に、レチノイン酸のミセル(両親媒性物質が集まったかたまり)を、カルシウムやマグネシウムの炭酸化合物などの無機材料でコーティングしたナノ粒子をDDS(ドラッグ・デリバリー・システム、Drug Delivery System)として利用する用途開発を目指して設立された。DDSは体の必要な箇所に薬効成分をカプセル化して確実に届ける先端技術であり、この実用化を目指しているバイオテクノロジー系の大学発ベンチャー企業はかなり多い。

 同社は、このDDSに使うナノ粒子を“ナノエッグ”と名付け、親しみやすいことから社名に採用した。大学発ベンチャー企業の中には、変に先端技術らしさを前面に押し出したがゆえに意味の分からなくなってしまう社名が多い中では、ナノエッグは覚えやすい点でしたたかな戦略性を感じる。

 ナノエッグは聖マリアンナ医科大難病治療研究センターの五十嵐理慧氏(現ナノエッグ名誉会長)と山口葉子氏が起業計画を練り上げて起業された。五十嵐氏と山口氏は共同創業者として事業化の準備を進め、2003年9月に科学技術振興機構(JST)のプレベンチャー事業にテーマ「皮膚再生のためのレチノイン酸ナノ粒子」を提案した。この提案が2003年9月に選ばれ、創業に向けて一気に加速した。

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