1 もんじゅとは

 「もんじゅ」とは、高速中性子型増殖炉である。私はこの「もんじゅ」には高い関心を持っていた。なぜならば、「もんじゅ」の高速増殖炉技術/核燃料サイクル技術が将来のわが国のエネルギー供給の鍵を握る技術であるし、他国と比較しても国がリードしている技術であるからである。したがって、1995年のナトリウム漏出火災事故で運転休止となったが、一刻も早い運転再開を国会から促していた。

 本体工事が2007年に完了しており、それから何回も再開延期が繰り返されたが(一度国会で再開延長の責任追及をした結果、日本原子力研究開発機構幹部の減給となったことがある)、2010年5月6日にやっと2年後の本格運転を目指して10年の計画で運転を再開した。

 今回はこの「もんじゅ」について考えてみたい。「もんじゅ」を用いて、発電施設としての信頼性の実証、運転経験を通じてナトリウム取扱技術確立、また、研究開発の場として今後の利用が予定されている。

もんじゅの視察風景
もんじゅの視察風景

2 核燃料サイクルにおける高速増殖炉の位置付け

 原子力発電では、原子炉の中で濃縮ウランを核分裂反応させると、プルトニウムが発生する。プルトニウムの利用は、核不拡散の観点から着実に実施することが必要であるが、その利用方法は大きく分けて、高速増殖炉における利用と軽水炉におけるMOX燃料利用(プルサーマル)に分けられる。

 我が国における高速増殖炉の開発は、実験炉「常陽」を経て、現在、原型炉「もんじゅ」において、MOX燃料とナトリウム冷却を基本とする技術を用いた原子炉の技術的性能の見通しを得ること等を目的とした研究開発が行われている段階である。なお、高速増殖炉サイクル技術は、第3期科学技術基本計画(平18.3.28閣議決定)において、国家基幹技術に選ばれている。

出典:日本原子力研究開発機構ホームページ
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 高速増殖炉の実用化に向けた研究開発は、次のステップで進められ、最終的には商業化を目指している。

(出所)「原子力政策大綱」(平17.10.11 原子力委員会)等を基に作成。
種類 名称 着工 初臨界 出力等(熱出力) 目的
実験炉 常陽
(茨城県)
昭45.3 昭52.4 14万キロワット
発電設備なし
・高速増殖炉の原理の確認
・安全かつ安定的な運転の実証
<現状>照射試験等に使用されている。
原型炉 もんじゅ
(福井県)
昭60.10 平6.4 71.4万キロワット
(電気出力28万キロワット)
・発電プラントとしての信頼性の実証
・ナトリウムの取扱い技術の確立
<現状>平成7年8月に初送電、平成7年12月のナトリウム漏れ事故以後、運転停止。改修工事、燃料交換等を行った上で、平成22年5月6日に運転再開、同8日に臨界達成。今後10年程度かけて、上記目的の達成に取り組む予定。
実証炉 2025年運転開始を目指して、中規模プラント設計・建設 ・高い経済性と信頼性を備えた発電プラントシステム
実用炉
(商業炉)
2050年より前の商業炉の開発を目指す