これまでも、カップラーメンや化粧品などをSNSのユーザーの意見を集めながら開発し、販売する例はあった。このプロセスで完成したモノは、意見を述べたり、その経過を見ていたりしたユーザーが当然購入してくれるだろうという手法だ。こうした取り組みにリアルタイムという制約を導入することで、さらに面白いモノづくりの手法が生まれる。孫社長や勝間さんの生放送は、そんな可能性を感じさせる体験だった。

 先日、数年前に一緒に仕事をした某大手SI企業の担当者と久しぶりにお会いした。彼は、国をまたがり、時差を利用して24時間体制でITシステムを開発する仕組みを構築し、その効果を検証していた。

ネット上の共創は何を生み出すか

 就業時間が終わったら、途中であっても自分が書いたソフトウエアのソースコードを、次の国のエンジニアに引き渡す。その後、ソフトウエアは同じように異なる国でプログラミングする複数のエンジニアの手でリレーされ、翌朝に作業が進んだ状態で自分のところに戻ってくる。

 当然、引継ぎのオーバーヘッドはかかるし、伝達ミスがあるとソフトウエアに欠陥が発生する。国や地域で文化の違いもあるだろう。だが、結果から言えば、このプロジェクトはうまくいったという。完成したシステムは定量的評価でも、開発期間や品質の面で十分に満足できる結果だった。

 これはソフトウエア開発の例ではあるが、デジタル化で標準部品が当たり前になったモノづくりでも、十分に導入可能な手法かもしれない。さらに、世界中のユーザーのフィードバックを24時間体制で反映させるUstreamのような仕組みを導入することも、決して夢物語ではなさそうだ。試しに、商品開発の過程を動画で生放送してみてはどうだろう。

 もちろん、ネットでユーザー同士が結び付く環境を生かした、モノやコンテンツの共創革新の真価が問われるのは、これからである。それを探求すべく、私もUstreamの生放送にゲストで登場したり、自分の仕事の様子を“ダダ漏れ”させたりする取り組みを始めてみた(筆者のUstreamチャンネルはこちら)。何が生まれるか、今から楽しみだ。