これまで、インターネットは時間と場所という物理的な制約を私たちから取り除き、「好きな時間に好きな場所で自分が欲しい情報を手に入れることができる」ことが利点だと言われてきた。

 Ustreamの共創環境の面白さは、この利点とは逆である。多くの人と協力してコンテンツを作り出しているという醍醐味を味わうためには、時間という制約に縛られるのだ。一見、不自由に感じられる制約が、これまでのインターネットにはない雰囲気を醸し出している。

 そう。後で知人に孫社長の発表動画を見せても、動画を視聴している時のあの感動は共有できないのである。Ustream の面白さは、この同時性から生まれている。

 ソフトバンクのイベントが開かれた日の夜、経済評論家の勝間和代さんがUstreamで面白い実験放送を始めた。どうやら勝間さんも、ソフトバンクのイベントを見ていたようで、Ustreamの爆発的、潜在的な可能性を感じたのだろう。早速、自分で生放送を始めたのだ(当日の動画はこちら)。

学習する様子がコンテンツに

 面白いのは、恐らく「いろいろと調べて、仕組みを理解してから放送しよう」と勝間さんが考えなかったことである。Ustreamによる動画配信を学習する様子をそのまま生放送したのだ。

 Webカメラが備え付けてあり、インターネットを使う知識があれば、動画自体は簡単に配信できる。勝間さんはそこから先の作業について、「どうやるんですか?」と視聴者に尋ねた。

 その問い掛けに、生中継を見ているユーザーが「こうすればいい」とUstream経由で答える。それを繰り返すことで、ネット上の知恵が次々と勝間さんに集まってくる。勝間さんは多くの知恵を獲得して、どんどん理解していく。その学習スピードは、1人で本を読んだり、1人で実験をしたり、家庭教師を雇ったりするよりもよっぽど速い。

 本来は、使い方を何も知らない初心者の実験的な生中継など面白いはずがない。ところが、分からないということを公開する勝間さんを、数百人のユーザーが見守り、みんなで助ける。勝間さんがUstreamをマスターしていく様子は、非常に面白いコンテンツになった。

 そして、中継を見ていると勝間さんだけでなく、視聴者も一緒にUstreamを学習できる。「ソーシャル・ラーニング」という言葉がピタリと当てはまる体験だった。