民需掘り起こしのための課題

 次に提言書では、民需掘り起こしのための課題について具体的に述べてある。

出典:内閣府資料
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 民需掘り起こしにつき「選択と集中」を考えることは大いに結構であるが、こういったものは相対的なものであると考える。まず考えるべきは外国と比べてどこが進んで、どこが弱いのかだ。SWOT分析なりの手法を駆使した上で出された提言なのだろうかという疑問はぬぐいきれない。また、外国特に米国との連携が大変重要であり、そこへの言及がないことは残念だ。

官需から民需へのパッケージ化戦略

 提言書において、民需掘り起こしと並んで重要と位置づけられているのが官需である。わが国の現状は、官需が90%を越え(国費投入額≒宇宙機器産業規模)、国家予算にとって大きな圧迫となってきた。米国・ロシア・中国も官需で宇宙産業を維持してきたが、EUのように民需もある程度取り込んでいる場合もある。後者のモデルを目指していきたいという考えだ。

出典:内閣府資料
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そして、その具体案として提言されているのが「パッケージ化戦略」だ。

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 提言書によれば、省庁を中心とした新需要を創出し、『基本設計へのスタンダード戦略の埋め込み』・『標準化戦略による戦略部品の確保』・『各国のシステムへの日本部品の戦略的供給』等、長期にわたる販売戦略をあらかじめパッケージ化するという。

 たしかにパッケージ化は結構であるが、結局一番大切なのは、どういう資源を投入するかではないか。カネと人をどう配分するか、この具体的考察からスタートすべきだと筆者は考えるが。

 一方、売り込みにあたっての提言については大賛成だ。提言では、「省庁横断型」「産官学一体型」の施策の遂行には、宇宙関連の予算を総覧し、意思決定が一元化できる「宇宙庁」(仮称)の設置がうたわれている。是非とも政府によるトップセールスにつなげたい。

議員連盟で対応する!

 提言書全般について言えることだが、「国が予算をつければいい」という思想から脱却することが完全にはできていない。予算をつけるだけではなくて、「意識的に」産業育成をする必要性を理解できていないのではないか。綿密なスケジュールと国内産業企業優遇措置が伴ってはじめて、民需なり官需なりを語ることができるのではないか。

 前回【宇宙戦略(7)】で書いたように、オバマ政権下で米国宇宙戦略が改訂されたことにいかにマッチングするかにも踏み込んでほしかった。筆者も宇宙産業関係者の方々とお会いする機会が多いが、「政権が変わり、意見を言う相手がいなくなってしまった」との声をよくうかがう。私も、関係する議員連盟をつくるなどして、引き続き宇宙政策への対応を進めていきたい。