新しい採算指標が企業収益を変える

 また、キャッシュの回収スピードを評価するに当たっては、損益構造を時間軸で可視化すること。そして、先行的に投資した固定費の「回収ポイント」のマネジメントが重要であることを説いた(図2)。この時間軸で損益構造・コスト構造を可視化する手法として、「Time-line Costing(TLC)」という方法論がある。このTLCの考え方を企業で導入することが必要であり、そして、キャッシュの回収スピードを評価できる新評価指標(KPI)の導入が急務である。

図2:投資の回収ポイントを可視化する『Time-line Costing』
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 その中でも、最も代表的な指標として『TLC指数』がある。TLC指数の構成要素を図3に記載した。

図3:TLC指数の構成要素
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  • 「回収金額比率」:総コストに占める回収金額の割合である。よく行われる金額としての率の管理である。より低い金額にて回収できることが望ましい。
  • 「回収期間比率」:製品ライフサイクルに占める回収期間の割合である。これが、回収スピードとなり、プロダクトキャッシュマネジメントにおいては重要な指標となる。

 これら二つの要素をかけあわせたものがTLC指数である(図4)。この数値は、事業キャッシュの健全性を示し、小さい方が良いことになる。ただし、このTLC指数は、金額と期間をかけあわせたもののため、算出された数値に絶対的な意味を持たない。あくまでも、製品を相対的に評価するための指標であることに注意が必要である。

図4:TLC指数とは?
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 よって、図5のように事業部内の製品損益評価を行う際に、利益率(もしくは利益額)の評価に加えて、TLC指数の相対評価も実施する事が重要となる。特に、新製品企画や原価企画において、目標利益や目標原価を設定するだけでなく、事業部平均・製品シリーズ平均を下回る『目標TLC指数』を設定しマネジメントする必要がある。利益額(規模)や利益率(効率)だけを追求するビジネスから、回収スピードを追求するビジネスに転換させるためにも、TLC指数は意味のある指標となる。

図5:TLC指数を用いた製品収益評価(例)
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真のキャッシュフローマネジメントとは?