中国では,毎月のように各地で太陽電池のコンファレンスや展示会が開催されている。そして,この場では,業界のキー・パーソンや企業トップから多くのメッセージが発信されている。これらの発言を聞いていると,中国の太陽電池産業が置かれている状況,現状の課題,この産業が目指す方向などがよく分かる。

 今回は,2010年1月20~22日に北京で開催された「第4回中国新能源国際Forum」での,中国太陽電池産業界のキー・パーソンの発言を拾い出してまとめた。そこには,中国の太陽電池産業の最新の状況と共に,中国から見た世界の太陽電池産業の状況などが語られている。中国の太陽電池産業の置かれた状況を把握するのには格好の材料である。

国の立場から大局的な方向を示す

 「第4回中国新能源国際Forum」の開幕式には,以下のメンバーが登壇し,挨拶した。

  李河君氏:漢能控股集団有限公司注1)董事局主席/総裁(全国工商聯新能源商会会長)
  趙玉文氏:中国可再生能源学会光伏分会主任
  史立山氏:国家能原局新能源司副司長
  曹建林氏:国家科学と科技部副部長
  任東明氏:発展と改革委員会能源所専門家

 上記のメンバーは,国の立場で太陽電池産業の方向性を指導していく人が多い。必然的に中国太陽電池産業の置かれた状況および方向性を語っている。この発言の中から,いくつかのメッセージを拾い出して内容ごとに整理した。

注1)漢能控股集団有限公司は,水力発電を中心とした新エネルギーの会社。薄膜太陽電池製造へも参入。

逼迫する中国のエネルギー事情

 中国のエネルギー事情に関しては,史立山氏が詳しく述べている。その内容を箇条書きする。

●中国では,2009年のエネルギー必要量が石炭換算で30億トンであり,そのうち実際に石炭が7割を占めている。今後もエネルギー需要は増加し,2020年には40億トンを超える見込みである。

●コペンハーゲン会議で中国の発表した目標は,2020年まで非化石エネルギーで全エネルギー使用量の15%を占め,GDP当たりのCO2排出量を40~45%に削減することである。これが再生可能エネルギーに良い発展の契機を与えた。

●2009年には,非化石エネルギーの比率は8.3%しかなかった。上記の目標を達成する場合,水力発電が300GW,風力発電150GW,太陽光発電20GWがそれぞれ必要である。再生可能エネルギーの利用量が,現状の2倍にならないといけない。