2010年2月1日、年頭教書にて米国オバマ大統領が新宇宙政策を発表した。オバマ政権になり、宇宙政策はどのように変化していくのだろうか。筆者が3月某日に最新の宇宙政策動向に精通した米国人教授と会談した情報も交え、俯瞰していきたい。

わが国の宇宙飛行士の方々

2011年度米国宇宙予算の要点

 大前提として、今回の宇宙予算でも増額(今後5年間で60億ドルの予算を追加し、総額で約1000億ドルに)が発表されたように、総論において米国の宇宙政策がオバマ政権の下で大転換するというわけではない。これまで行ってきた気候変動研究や地球観測に関する取組みはさらに充実・強化され、無人の太陽系探査のプログラム、天文観測衛星の取組みも進められるというように。ただし、各論においては若干の修正もある。

宇宙探査について

 まず、宇宙探査においてコンステレーション計画が中止される。これは、ブッシュ前政権の下で開始されたもので、現在開発中の有人宇宙船とその打ち上げ用ロケットなどにより、2020年までに有人月面探査を目指す計画であった。この計画は進行の遅延や、多大なコスト超過が指摘されており、新政権においての中止が決まった。

 その一方、将来の宇宙探査のための革新的な技術開発が開始される。これは、(有人宇宙活動自体の中止を意図するものではなく)将来の有人宇宙活動を念頭に、創意工夫しながらより効率的・革新的に宇宙探査を実施するための技術開発などを行うものである。

 将来の探査の能力拡大とコスト削減を目指し、基幹技術の開発や実証をやり直す。具体的には軌道上で燃料補給・保管をスムーズに行うこと、伸縮可能なモジュールを作ること、生命維持技術を進化させること、自動ランデブ・ドッキング技術を開発すること、などだ。

 また、将来のために大型ロケットを低コスト・短期間で開発するための研究も進められる。諦めていない有人探査の先行ミッションとして、月へのロボット探査ミッションも継続される。

宇宙運用について

 現在進行形の宇宙運用についても、根本的な変化はない。2015年までとされていた国際宇宙ステーション(ISS)計画の運用を少なくとも2020年まで継続する。この計画は、わが国、欧州、カナダ、ロシアと共同で実施されている。わが国はISSにおいて、2009年7月に打ち上げ完成した実験棟「きぼう」や、同年9月に打ち上げられたHTV(宇宙ステーション補給機)による物資輸送能力の提供により貢献してきた。オバマ政権になっても、基本的な各国との協力体制は維持したいという。

 しかし、米国企業による輸送手段の活用は増やしたいとの情報もある。これには米国内で数千人の新たな雇用を創出したいという意図と、ISSへの有人宇宙輸送を海外に頼るというリスクをおかさず米国オンリーでやりたい、という意図が見え隠れする。

米国の宇宙政策はどう変わるか

 基本的政策の方向が変わらないとしても、オバマの宇宙プランには一つの傾向が感じられる。それは、政府と民間の役割分担がより明確化してくることだ。民間は商業利用を進め、政府は安全・教育面において支援していくというように。

 また、米国が心配しているのはやはりコストだろう。わが国からの貢献もより一層求められることは確実だ。とくに、商業利用といったビジネス面や、地球温暖化対策に資する部分においての資金需要は重要である。

 われわれ民主党としては少々耳の痛い話であるが、環境・エネルギー・通商とともに、宇宙においても日米ダイアログ(対話)をもっともっと行っていくことが必要である。