2010年はDGレシオが好スタート

 2010年に入り,LSI市況の回復傾向が一層鮮明になってきた。LSI市況は2009年春ごろから回復してきたが,同年秋ごろには伸び悩み傾向も見られ,二番底に対する懸念が出ていた。しかし,2009年末の在庫調整がうまく進んだことや,アジア地域での旧正月需要が例年以上に盛り上ったことで,2009年後半に一時低下したDGレシオは,年末から再び上昇に転じている。2010年は好調な出足となった。

 トレンド線となる「DGレシオ(3カ月移動平均)」をみると,2010年1月は対前月比で微増の1.15と,2009年12月に引き続いて2カ月連続で上昇し,本格的なLSI市況回復の様子が鮮明になってきた(図1)。旧正月の消費は好調だったようであり,セット・メーカは旧正月以降もLSI調達を継続するとみられる。このため,このトレンド線は今後も上昇を続けるだろ。LSIの在庫水準は低く保たれており,LSI市況における二番底に対する懸念は益々小さくなっている。この結果を受け,われわれは2010年のLSI需要は対前年比+16%と予測しており,2010年後半に先進国の雇用環境が改善すればさらに上方修正も狙えると考えている。

図1 DGレシオ(3カ月移動平均)の推移
米iSuppli Corp.のデータ。
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 旧正月におけるLSI応用製品の販売状況はテレビ,エアコンが好調であり,ノート・パソコン(PC),スマート・フォン,自動車も2009年を超える販売台数を達成したようだ。新興市場は,早くも「100年に1度」といわれた未曾有の不況を切り抜け,自律回復を始めている。例年なら季節要因によって第1四半期にセットやLSIの市況に落ち込みが見られるが,2010年は旧正月の販売が好調なために例年のような落ち込みは見られない。

 上記のテレビ,エアコン,ノートPC,スマート・フォンは引き続き好調である。例えば中国のテレビ販売台数の速報値は,1月が対前年同月比+35%の3500万台,2月が同+70%の2700万台と大幅に伸びている。最近は納期トラブルの話も聞くようになった。これに呼応して,2010年1月のLSI受注も対前月比で増加している。

 中国をはじめとするアジア諸国の旧正月需要は,これまでのエレクトロニクスの景気サイクルを完全に変えてしまった。2010年の景気動向に関しては,中国政府が消費刺激策を継続し,同国の景気が好況であることは間違いない。LSI産業も中国の景気動向に強く依存するようになっている。