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コラム

加工法開発で急成長,ダイカスト鋳造設備も配備〔名光精機〕

2010/03/02 12:00
森野 進=日本起業家新聞社
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出典:日経ものづくり,2009年2月号 ,pp.136-138 (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

名光精機のここがすごい!

自動車部品の精密加工を手掛ける。創業から7年目だが,加工法の開発力などが評価され,取引先からの信頼は厚い。新規にダイカスト設備を導入,鋳造から機械加工までの一貫体制を整えている。

 名光精機は,自動車用精密部品の切削を主体とする加工会社である。2002年3月創業の若い会社だが,2008年2月期の売上高は38億円,2009年2月期も43億円の売り上げを見込むなど順調な成長を遂げている。主な生産品目は,月間100万個を生産する自動変速機(AT)用リニア・ソレノイド・バルブ。このほか,リニア・ソレノイド・コア,VVT(可変バルブタイミング機構)向けバルブ,EGR(排ガス再循環システム)向けバルブ,ターボチャージャ用羽根車などだ。いずれも排ガス中の有害成分の低減や燃焼効率の向上などに効果があるため,同社では低公害技術製品と呼んでいる。

自動化されたライン
自動化されたライン
一人の作業者が5台のNC旋盤を操作する。

2002年に3人で創業

AT用リニア・ソレノイド・バルブ
AT用リニア・ソレノイド・バルブ
内外径を1チャックで加工。±3μm以下の内径加工公差を達成した。
異物混入検査食品会社の検査
異物混入検査食品会社の検査
食品会社の検査ラインからヒントを得て開発したもの。
ダイカスト鋳造設備
ダイカスト鋳造設備
2008年8月に新規に導入した。現在は試験稼働中。製品には順次利用していく。
名光精機社長の松原光作氏
名光精機社長の松原光作氏

 名光精機の持ち味は,精密切削の加工法開発と量産加工技術だ。だが,成長の局面では運も味方した。会社発足時の社員数はわずか3人。そこへアイシン・エィ・ダブリュ(本社愛知県安城市)からいきなり「ATの駆動系部品を一緒に開発しないか」と声が掛かった。依頼主は,名光精機社長の松原光作氏の,前職時代からの旧知の技術者。前輪駆動(FF)車用6速ATの開発に際して,駆動系部品の応答性と吸引特性を向上させるために部品精度を良くしたい,という要求だった。「我々の技術を見込んでの依頼だったようだが,あのタイミングを逃していたら,今のうちはなかった」と松原氏は振り返る。

 最初の開発品は,内径11mmのリニア・ソレノイド・バルブ。従来品は加工公差が±12μmであったのに対し,開発品のスペックはその1/4の±3μm。内側表面にはアルマイト処理を施すので,実際の機械加工では±2μm以下の精度が必要だった。ところが1年後の2003年3月には量産加工技術を確立,直後からフル操業に入った。リニア・ソレノイド・バルブの加工で成功を収めると,取引先の件数や加工品目が急速に拡大し,成長軌道に乗った。

加工法にこだわる

 名光精機が多くの同業他社と異なるのは,顧客からの見積もり依頼があってから加工法を考えるのではなく,常に先行して開発を進めていることだ。取り扱い分野を低公害技術製品に特化しているのも,技術動向を的確に把握するためである。特別な生産設備はないが,品質向上,とりわけ精度を出すための加工法には日常から工夫を凝らしている。

 加工時のチャッキング方法もその一つだ。アルミニウム合金のような軟らかな材料をNC旋盤で加工する場合,ワークのつかみ方が重要になる。円筒形状を造る一般的な加工法では,ワークの外周を加工した後,チャッキングし直してワーク内周を加工する。その際,チャッキングで加わる応力によるワークのゆがみが問題になる。これが,仕上がり精度に少なからず影響を及ぼすからだ。

 これに対し同社では,ワークを直接つかむことはしない。あらかじめ鋳造工程でワーク本体に加えて“つかみしろ”の部分を造り,加工時にはそこをつかむようにしている。製品にならない部位なので,どんなに強くつかんでもワークは損傷しないし,加工時にぶれることもなく,仕上がり精度が安定する。さらに,外周加工から内周加工に移行する際,チャッキング方法を変更する必要がないので,工程を減らせるメリットがある。AT用リニア・ソレノイド・バルブで比較すると,同業他社の多くが約5工程かけて加工するのに対し,同社の方法だと余分な部位の除去も含め,機械加工は3工程で完結する。

 ほかにも「外部の人が見たら,あっと驚くような加工法がある」と,同社の技術者は指摘する。詳細は明らかにしないが,例えばNC旋盤を使用して特殊なリーマ加工を行っているという。リーマ加工とは,穴開け加工の精度を高める仕上げ加工のこと。旋盤加工はマシニングセンタ(MC)に比べて真円度や円筒度の精度を高めやすいが,内周の切削精度ではバニシングドリルを用いたMCでの加工に軍配が上がる。そこで,両方の要素を兼ね備えた加工法を模索する中で,MCを使わずに特殊な治具を使ってNC旋盤の中でワークを回転させながら加工する方法を実用化した。会社設立から日の浅い同社が取引先から信頼を得ているのは,こうした加工法開発へのこだわりが高く評価されているためである。

ダイカスト鋳造設備も導入

 名光精機では従来,切削加工以外の多くの工程を協力会社や仕入先に委託してきたが,今後はこれらの工程の内製化を進める。その第一弾として2008年8月にダイカスト鋳造設備を導入した。現在は試験稼働中だが順次,製品に適用していく。

 自動車産業が未曽有の不況に突入する中,どこの企業も安穏としてはいられない状況だ。しかし,同社の場合は2009年春から量産に入る製品があり,2010年2月期の売上高は10%程度の落ち込みにとどまる見通しである。むしろ,2008年は24時間フル稼働が330日にも達し,多くの従業員が土日も休めない状況が続いた。「仮に業務量が半減したとしても,土日を休日にすればちょうどよい状態になり,それでも利益は確保できる」と,松原氏はみている。

名光精機
所在地:愛知県津島市
名光精機 資本金:5000万円
従業員数:110人
売上高:38億円
主要生産品:自動車用精密切削品
得意な技術:精密切削加工と加工法の開発
主要な設備:NC旋盤,マシニングセンタ,研磨機,画像処理検査装置,ダイカスト鋳造機

松原光作氏がオススメの中小企業

紹介先:名古屋技研工業 (所在地:岐阜県中津川市)
鍛造,切削,ろう付けの組み合わせで,顧客が要求するQCDに応える。閉塞鍛造や摩擦圧接などの特殊技術を持つ一方,切削加工のラインでは自社製QA機(外観異常検査機)による工程内検査を実施する。
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