日本にも資源は眠っている
日本にも2006年まで世界最大の鉱山がありました。Inは液晶を製造する際に欠かせないレアメタルですが、国内ではすでに資源を掘りつくしてしまい、現在は全面的に輸入に頼っている状況です。日本政府は当面の対策として、国家備蓄を強化しています。また、供給源を多様化するために、各地での探査・開発にも注力しています。
これまであまり注目されていませんでしたが、日本にも「黒鉱ベルト(グリーン・タフ)」と呼ばれるレアメタルを含む鉱床が存在します。この鉱床にはPb(鉛)、Zn(亜鉛)、Ba(バリウム)などが含まれています。分離に手間がかかるため、採算面からこれまで採掘は行われていませんでした。しかし、価格高騰を受けて今後は開発が進む可能性があります。
ほかにも、海水中にはLiなど膨大な量のレアメタルが溶け込んでいます。海水中から様々な資源を回収/分離する技術の研究開発も進められており、その一部には生物(バイオ)を使ったユニークなものも含まれています。日本では「海洋資源開発」がこれまで以上に注目を集めることになるでしょう。
「静脈」部分の取り組みに注目
企業としては、これから資源の確保を「経営戦略の一部」として考える必要があります。材料の調達は、これまでのような担当部門の業務ではなく、社長や役員が判断するべき重要な事案になっていきます。今後は、生産プロセスだけでなく「材料の確保」の検討が必須になるでしょう。競争力の維持とリスク低減という両方の意味で、レアメタルの使用量を減らすための研究開発は重要性を増していきます。
リサイクルしやすい設計や回収プロセス作りも非常に重要です。特にレアメタルは、元素レベルでは地球上からなくなるわけではありません。「消費」といっても資源が物理的に減るのではなく、拡散したり、元に戻せなくなって使えなくなったりしていることが問題なのです。今はコストに見合わないために廃棄しているものが大半であり、基本的には経済問題の範疇といえます。水と同様、地球上のあらゆる資源は「循環」しなければ「持続」はできません。これからは、今まであまり意識されていなかった「静脈」部分の取り組みに注目が集まっていくでしょう。
アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー