「サスティナビリティ」が決める未来(その2)---「もの」がなくなる「ものづくり」
前回は、新興国(主に中国とインド)の爆発的な人口増加と経済成長によって、これから「あらゆるものが足りなくなる」という見通しについて解説しました。世界人口の4割を占める中国とインドで需要が激増し、エネルギーや資源、食料、水などの「需給逼迫」という問題が顕在化するだろうと筆者は予見しています。
「不足」には、生産が追いつかないということと、物理的に足りないという両方の意味があります。爆発的な人口の増大に加え、経済的な成長によって購買力が高まること、さらには「米国的ライフスタイル」ともいうべき、大量生産による使い捨てなど、経済力に任せた過剰消費型の生活習慣の広まりに起因する喫緊の問題です。
このことは多くの産業に大きな影響を与えますが、なかでも「ものづくり産業」が深刻な危機に直面する可能性をはらんでいます。特に製造業やハイテク産業は、材料の調達がビジネスの継続に直接的に影響します。必要な量の材料が入ってこなければ、生産ラインが空いていても稼動させることができなくなってしまいます。すでに世界では、Si(シリコン)やLi(リチウム)をめぐる熾烈な争奪戦が始まっています。
これからのビジネスを考える際には、「世界のすべての人を満たすだけの資源はない」ということを強く認識しなければなりません。これまでと同じやり方では長く続かないのです。前回も強調したように、社会環境の大きな変化によって、循環型社会を目指す「サスティナビリティ(持続可能性)」という概念が極めて重要となるでしょう。
今回は、エレクトロニクスや自動車産業などでは不可欠な資源であるレアアース、そしてLiの話題を中心に、サスティナビリティについて解説していきます。
極端に偏在する希少資源
レアメタル(希少資源)は、携帯電話機やデジタルカメラ、パソコンなど、主要な電子機器では必ずといっていいほど使われている重要な資源です。例えば、自動車の排気ガスを浄化する触媒に使われるPt(白金)、ハイブリッド車の高性能モーターに欠かせないNd(ネオジム)やDy(ジスプロシウム)、液晶パネルの透明電極に使われるIn(インジウム)、ハードディスクの材料になるRu(ルテニウム)、2次電池に使われるLiやNi(ニッケル)、Co(コバルト)など、エレクトロニクスや自動車産業の根幹に関わる材料は全てレアメタルです。日本では、実に世界全体の1/4のレアメタルを消費しています。
レアメタルは入手しにくい物質です。単に絶対量が少ないものだけではなく、放射能の問題などで生産が困難であったり、超高所など採掘しにくい場所に存在していたりするなど、様々なタイプのものがあります。コスト無視ですべて掘り出したとしても、20〜30年のスパンで枯渇する可能性があるレアメタルも少なくありません。
レアメタルの特徴は、一部の国に極端に偏在しているケースが多いことです。例えば、Ptは全体の埋蔵量のうち9割以上を南アフリカ共和国が、W(タングステン)は7割近くを中国がそれぞれ保有しています。Liは、チリ、ボリビア、アルゼンチンの南米3カ国で8割を占めています。生産量が限られるうえに、このように上位数カ国が世界全体の埋蔵量の大半を握っているのです。
希土類は「レアアース」とも呼ばれるレアメタルの一種で、Ndなど17種類の元素の総称です。現在実用化されている最も高性能な磁石は「Nd磁石」ですが、これを生産するにはレアアースの調達が必要です。しかしレアアースの産出は、全世界の90%以上を中国が占めています。もし中国がレアアースの出荷を拒むような事態に陥れば、入手が極めて困難になるでしょう。最悪の場合、必要な材料が調達できずに、自動車や電子機器の生産がストップしてしまう可能性も否定できません。
レアアースは鉱石中にごく少量しか含まれないばかりか、製錬には大量の土砂と強烈な薬品を必要とします。また、生産の過程ではおびただしい量の残渣(ごみ)が生じます。環境に深刻な影響をもたらすレアアースの生産は、世界のなかでも中国くらいでしかできないというのが実情なのです。
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