ITが取り扱うのは、文字通り「情報(Information)」である。情報はデジタル化することで、複製(コピー)が容易になる。コピーを何度してもほとんど原価は増えない。情報をソフトウエアやデータと読み替えてもいい。この扱う商材が「コピーしても原価が発生しない」という特徴がITビジネスの本質の一つである。

 大きな利益を上げたいならば、同じITでも、情報をコピーして顧客に提供するビジネスを手がけた方がよりITの本質を活用したビジネスと言える。米Microsoft社の「Windows」や「Office」などは複製して売れば売るほど利益率が高まる。「同社のビジネスは、紙幣を刷っているのと同じ」というのはよく言われるところだ。

 この“紙幣を刷る”ビジネスは最近、さらに進化している。グリーやディーエヌエー(DeNA)が提供する携帯電話向けのSNSは好例だ。両社は、SNSユーザーのインターネット上の分身、いわゆるアバターが使う「アイテムに課金するビジネスモデル」で急成長した。これは、コピーに原価がかからないITの本質をついたビジネスだ。

営業利益率が6割を超える

 アイテムといっても、リアルな物体ではない。アバターが画面上で身に着ける、ネックレスやバッグなどのアクセサリであったり、洋服であったり、釣竿だったりするのだが、リアルな世界で考えれば単なるイラストである。「かわいい」「かっこいい」と思ってもらえるデザインの工夫が必要とはいえ、イラストの作成にそれほど高額の費用がかかっているとは思えない。

 だが、100円のアイテムを100万人のユーザーが購入すれば、売り上げは1億円である。グリーやDeNAのSNS会員数は千数百万人の規模だから、会員のほんの数%がそのアイテムを購入すれば、この計算は成り立つ。

 仮に、イラスト代としてデザイナーに10万円を支払っているとすれば、1000倍の価値を生んでいることになる。簡単にコピーできるから、アイテムの購入者がどれだけ増えても、製造原価は10万円のままで、利益は増える一方だ。その絶大な効果はグリーの業績を見れば、よく分かる。同社の2009年10~12月期の売上高は81億8000万円、営業利益は50億7300万円。売上高営業利益率は、実に62%と驚異的だ。