異論はあるかもしれないが、受託型のシステム開発は、個人的には“真のITビジネス”ではないと常々考えている。それは、基本的に労働集約型ビジネスだからである。

 受託型のシステム開発は、基本的に開発にかけた技術者の人数と期間の掛け算で原価が決まる。10人のチームが10カ月間で開発、1人当たりの月の人件費が100万円ならば、1億円が原価になる。

 この考え方は、原価の多くを人件費が占めるという点で請負型の建設業に近い。建設業は材料費があるので原価の計算は異なるかもしれないが、大きく違うのは肉体労働か、椅子に座って仕事をするかである。

コンサルティングも労働集約型

 少し話は脱線するが、収益率が高いという印象があるコンサルティングというサービスも、人員と期間の掛け算が原価で大きなウエイトを占める。受託型のシステム開発と基本は同じだ。原価に占める付加価値の割合は比較的高いが、同じような労働集約型ビジネスである。

 大学時代の恩師の言葉を借りると、コンサルティング・サービスは「知的風俗業」だ。

 経験の浅い若手コンサルタントを着飾らせ、ベテラン社員とパッケージにしてテーブルにつかせる。お客さんに満足してもらうために、新聞や雑誌をたくさん読み、勉強をして専門知識をつける努力は欠かせない。顧客に役立つトークで気に入ってもらい、指名をとらなければならない。そこに大きな付加価値がある。

 ただ、コンサルタントの身体は一つしかない。売り上げをさらに増やすには、コンサルタントのスキルを向上してサービスの付加価値、つまり単価を高めるか、1人が担当するテーブルを増やして回転率を高めるしかないのだ。コンサルタントの人数を増やすという方法もあるが、いずれにせよ、原価の基本が人件費なので一定以上の利益率にはならない。

 このように、知識集約型のように見られがちな仕事でも、リアルな世界でビジネスを進めているうちは、実は労働集約型の側面を色濃く残さざるを得ない。

 では、真のITビジネスとは、何だろう。