2010年1月28~29日に姫路で開催されたTFTの国際会議「International Thin-Film Transistor Conference 2010(ITC'10)」で,Invited Paper(招待論文)を発表する機会を得た1)。筆者の発表内容は次世代FPD基板用TFTの要求性能について。参加者から大きな反響があったので,ITC'10の許諾を得て今回その一部をこのコラムで紹介させていただく。

1)Matsueda, Y.,“Required Characteristics of TFTs for Next generation Flat Panel Display Backplanes,”The Proceedings of the 6th International Thin-Film Transistor Conference, pp.314-317, 2010.

 ITCはTFTに特化した国際会議で,第1回は2005年3月にソウルで開催された(Tech-On!関連記事1)。その後,日本(北九州),イタリア,韓国,フランスで開催され,今回で6回目を数える。次回は英国ケンブリッジで開催予定である。

 今回は招待論文18と一般論文71の計89の論文が集まり,二つのセッション会場で同時に進行された。セッションの一つはSi関連で,もう一つは酸化物と有機TFTであった。筆者は後者のセッションに参加したのだが,数多くの興味深い論文を聞くことができて満足した。また,ポスター・セッションも盛況だった。最後のシンポジウムでは “Si系,酸化物,有機TFTのどれが次世代TFTの本命か”という旬なテーマで6件の発表があり,筆者はそのトリを務めさせていただいた。同じ週に開催された,透明アモルファス酸化物半導体とそのディスプレイ応用に関する国際会議「International Workshop on Transparent Amorphous Oxide Semiconductors(TAOS 2010)」は,会場に入り切れないほどの参加者で熱気に包まれ,注目すべき発表も多くて面白かった(同関連記事2など)。ただ,配付された冊子にはAbstract(要約)のみ掲載されており,Proceedings(発表内容)が掲載されていなかったことがとても残念だった。

 ITC '10ではそれぞれのデバイスの専門家による客観的な議論が繰り広げられ,Proceedingsを読みながら自分の考えを整理することができてとても良かった。TA0S 2010ではそれぞれの企業の次世代FPD戦略がよく見えてきたが,ITC'10ではいくつかその裏付けや比較参照例となる報告もあった。このような地に足の着いた議論はとても重要だと思う。