前稿掲載のように、今月(2010年2月)にも政府は法制審議会へ諮問を行い、ついに公開会社法が立法手続きの俎上に載ると予測される。3月からの国会論戦を前に、ここでいったんこれまでの議論を総括しておきたい。

 最も重要なテーマともいえる「そもそも、他国と比べて日本の株主保護は行き過ぎているのか?」という点について、読者のご意見を参考にしつつ進めたい。

 実は公開会社法の民主党案には、「株主の行き過ぎた権限を抑制する」とはどこにも書いていない。あくまでもこの思想は藤末個人のものであることを「株主至上主義との決別」につづき、再度主張しておく。しかし、この想いが広く伝わったためか、読者の方から「株主保護」について最も多くご指導・ご批判をいただくこととなったのである。

 以下が、本件につきツィッターを通じて寄せられたご意見である。

@lllll111111:株主はその分最終的なリスクを負い、債権者は債務の限りの責任しか負わない。資金源が株式以外もあるから株主絶対主義がおかしいとは呆れる他無い。

@you2010:株主に制限をかけると、経営者がますます株主を無視し、非効率経営を助長しないでしょうか?非効率経営で不採算が続く企業は、社会の公器どころか、社会の足を引っ張るものではないでしょうか?

@fukui_dayo:株主の行き過ぎた権限って具体的に何を示してるんですかね。

@rk_cpa:このグローバルな時代に日本だけ配当の規制をしたところで、海外から更にお金が流れこまなくなるだけでは?政治家こそ国内ばかり見ずに李明博大統領のように外国への交渉力を発揮するべきだと思うんだが。

@Dursan:株主は他のステークホルダーより高いリスクを負っているので、配分が多いのは当然であると言う意見に対してはいかがお考えでしょうか。

@kmzk:株主の権利制限については,労働者の関わりと形式的に適正妥当とされていた監査が実質化する方向を強調された方が分かりやすいかと思います。

 読者が指摘するように、株主は他のステークホルダー(利害関係者)と比して「最終的なリスク(@lllll111111氏)」、「高いリスク(@Dursan)」を負っていることはよくわかる。しかし、リスクを負っているのは株主だけではあるまい。そう容易に転職先が見つかるわけではない従業員、顧客との共同歩調によって物品を提供する仕入先など、現在係わっている会社に対して極めて高い依存度を持つであろうステークホルダーは多数想定できる。「株主が出資の範囲内でリスクを負う=出したお金が返ってこない」という法律の文言を過度に誇張し、あたかも株主のみがリスクテイカーだと主張するのは危険ではないだろうか。

株主保護はやはり行き過ぎている

 2000~2007年にかけての株主への配当比率の急増、そして自社株買いの増加が私のそもそもの問題意識であった。会社にとってのステークホルダーは経営者・従業員・顧客・仕入先、所在地域住民…と社会の構成要員そのものともいえるほど多岐にわたるのに、昨今の株主優先の度合いは看過できない水準なのではないか、という疑問点である。

株主至上主義との決別」で「株主重視」の証拠として挙げたのは、米国のデータであったり、やや古いデータであったりしたため説得力に欠ける部分があった。そこで、今回は新しいデータを用意する。