『赤字製品』は悪と思うか?

 こんな当たり前と思われる質問に、企業収益を大きく変革させるヒントが眠っている。今回は、この質問を紐解きながら、ものづくり復活に向けての一手を説明したいと思う。

 前回の1回目では、コストよりキャッシュの重要性を説明し、損益期間ではなく製品軸(製品ライフサイクル)にて回収スピードを評価する重要性を説いた。ものづくりをしているのだから、“もの(製品)”を見て、そしてスピード経営やリードタイム短縮とうたわれている時代だから、“スピード”を評価する。すごく自然な発想である。しかし、こと会計の世界では、こんな当たり前の事が出来ていないと説いた。今回は、“もの”とは何か? にフォーカスを当てる。

 ここで冒頭の質問に戻る。『赤字製品』は悪と思うか? 当たり前であるが『悪』と答える方は多いと思う。だから赤字製品があれば、販売中止の意思決定などをするのである。しかし、本当に『赤字製品』は問題なのだろうか? 最近は、利益の源泉が製品から保守・サービス・オプション品に移行している。保守・オプション品の売上比率は、2割3割くらいしかなくても、利益で見ると4割5割を占めている企業も増えてきた。要は本品ではなく、保守・サービスで儲けている企業が増えてきたのである。製品で儲けるのは厳しくサービスで儲けているというのは、肌感覚で分かっているのではないか? しかし、それが会計の数字上で見えない企業が多い。この肌感覚を確実な数字で見せてくれないのである。

  • オプション別の利益は?
  • 付属品にかかった費用は?
  • オプションをどれだけ売れば製品の赤字分を埋めることができるのか?
  • オプション品はどこまで値引きしても大丈夫なのか?

 製品の会計は、(精度は別にして)個別原価など詳細なデータが出てくる企業は増えてきた。しかし保守などはドンブリ状態で個別損益は見えないのである。製品だけの損益を見て良い悪いを判断できない時代に関わらず、経営会議では製品損益だけで意思決定をしている。未だに製品一辺倒・製品中心主義なのである。

 では、保守・サービスなどの会計が遅れている原因は何か?

 問題(1):製品の『おまけ』意識

 DR(デザインレビュー)、意思決定会議、採算評価など、どれをとっても製品だけが評価される。保守品やサービス内容などは、本品(製品)の『おまけ』としか思われていないことが多い。会社によっては、「サービス部門=左遷」とまで部門地位が低いところもある。

 問題(2):実績収集・計算ルールが無い

 上記と関連するが、実績収集と原価計算の仕組みが無いのである。オプション品の設計工数、サービス提案する営業工数、保守パーツ用の部品費など製品以外に様々なお金が発生する。しかし、それらを実績収集し計算する仕組みが揃っていない。製品に混じってドンブリ勘定となっているのだ。重機などの個別受注型企業においては、製番管理が行われている。製品は1品1品個別生産であるが、保守パーツは量産になることがある。製番管理の仕組みしか無いため、保守パーツ品(量産品)を管理を難しくしている場合もある。

製品中心主義は終わりを迎える