宇宙基本計画とは

 前回の原稿「JAXAを文科省から切り離せ」では、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の位置づけについて「宇宙政策の対象を開発から利用まで拡大するため文部科学省傘下から外すべき」との考えを書かせていただいた。それに関連し、今回は「宇宙基本計画」についても意見を述べたいと思う。

 宇宙基本計画は、われわれが議員立法で2008年5月に策定した「宇宙基本法」第24条において規定されているもので、その役割は、

(1)宇宙開発利用の推進に関する基本的な方針
(2)宇宙開発利用に関し政府が総合的かつ計画的に実施すべき施策
(3)宇宙開発利用に関する施策を政府が総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

について定めるものとなっている。

 それを受け、2009年6月に初めての「宇宙基本計画」が策定された。そこでは基本的な6つの方向性、すなわち(1)宇宙を活用した安心・安全で豊かな社会の実現、(2)宇宙を活用した安全保障の強化、(3)宇宙外交の推進、(4)先端的な研究開発の推進による活力ある未来の創造、(5)21世紀の戦略的産業の育成、(6)環境への配慮を定め、さらに9分野のシステム・プログラム、すなわち宇宙利用システム(アジア等に貢献する陸域・海域観測衛星システム、地球環境観測・気象衛星システム、高度情報通信衛星システム、測位衛星システム、安全保障を目的とした衛星システム)、研究開発プログラム(宇宙科学プログラム、有人宇宙活動プログラム、宇宙太陽光発電研究開発プログラム、小型実証衛星プログラム)を定めている。

 特筆すべきは、今後5年間の衛星の打ち上げ計画など、他の基本計画では財務省の反対でできない「将来の予算支出に関する事項」まで盛り込まれたことである。

宇宙基本計画を戦略のレベルまで高めるには

 この点で宇宙基本計画は、政府が作る他の基本計画に比べて踏み込んだ内容となっている。だが、それで満足というわけではない。

 まず、宇宙利用という観点から「宇宙産業」の将来像を明確に示せているとは言えない点だ。宇宙産業は、宇宙開発、宇宙利用を支える重要な要素であり、その規模は広義で見ると全世界で現在6兆円を超える規模となっている。その将来像を語らず、ただ宇宙政策だけを示しても、宇宙開発はうまく前には進まない。

 逆に、将来的な宇宙産業のあるべき姿をきちんと示せれば、民間企業の技術基盤をどのように発展・維持させていくべきかという技術ロードマップも明確になる。さらに、宇宙産業のビジョンを実現するための政府融資・税制や海外展開の支援策など政府自体が行う宇宙開発以外の政策が幅広く見えてくるはずだ。

 宇宙産業という視点でみれば、個人的には種子島しかない射場の整備を急ぐべきだと思っている。射場を作るのには時間がかかるため、長期的な対応が必要不可欠だ。今後の展望については後述する。