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コラム

切削加工のスピードにこだわる,トラックのパワステ部品でシェア8割〔東洋パーツ〕

2009/12/08 12:00
森野 進=日本起業家新聞社
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出典:日経ものづくり,2008年10月号 ,pp.133-135 (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

東洋パーツのここがすごい!

加工スピードの速さ。切削加工機の能力をフルに発揮させて生産性を高めるために,周辺装置や刃物,治具にも工夫を凝らす。職場には5S活動が浸透し,三つある工場は整理整頓が行き届いている。
パワーステアリング部品の製造ライン
パワーステアリング部品の製造ライン
マシニングセンタ(MC)による高速切削とハンドリング・ロボットを組み合わせて,省力化を徹底している。

 東洋パーツは,パワーステアリングやラック&ピニオン,オイルポンプといった自動車向け油圧機器部品や,ターボチャージャ部品,車両保安部品の加工会社だ。国内向けトラックのパワーステアリング本体を構成する部品の加工では約80%のシェアを持つ。

 世界的に自動車市場が減速する中,同社の売り上げは2008年に入ってからも好調を続けている。2008年12月期の売上高は,過去最高だった前期の35億4000万円をさらに上回る見通しだ。海外向けのバス・トラック部品などが堅調だという。ただ,「その需要をつかめたのは, QCD(品質,コスト,納期)の改善や5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動に地道に取り組んできたため」と同社社長の小菅哲也氏は胸を張る。

安価で高回転数の機械を活用

ターボチャージャ部品の製造ライン
ターボチャージャ部品の製造ライン
ピン立て,洗浄,バリ取りなどは,手作業だとミスが起こりやすいのでロボットを導入して自動化している。

 東洋パーツが最もこだわるのは加工スピードである。同じ品質ならば加工が速いほど利益が出るからだ。同社はこの点を徹底的に重視し,マシニングセンタ(MC)やNC旋盤などの能力を余すことなく引き出す現場づくりを基軸にしている。ロボット導入や治工具開発といった取り組みも,最大の目的は切削加工機の有効利用と加工スピードの向上だ。

 切削加工に要する時間は,多くの傾斜が付いた複雑形状のパワーステアリング部品でもほんの数分。「加工スピードは同業他社を大きくしのいでいる」と同社の技術者は話す。しかも,使うMCは3軸タイプで,5軸加工機や複合加工機のような高額な機械ではない。同社では,主軸回転数は高いがシンプルで低価格の機械を導入し,ハンドリング・ロボットや周辺機器と組み合わせて社内でシステムを組み上げる。「その方が初期投資を抑えられ,既製システムよりも加工スピードが速い」(同技術者)からだ。

 しかも,現在の在庫量は原材料で1日分,加工済みの完成品で1.5日分しかなく,ほぼ無在庫経営になっている。1日にやるべき仕事は必ずその日に終え,デッドストックを発生させないという。

 同社は,経営の基本であるスピード加工を実現するために,さまざまな工夫を凝らしている。治具やシャンク(刃物を固定して主軸に差し込む保持具)の開発もその一つである。例えば,「MCは,単に回転数を上げてもバランスの良い加工はできない。そこで,普通は考え付かない材料を使用して独自のシャンクを開発し,バランスを保持した」(同技術者)。さらに,パワーステアリング部品の加工では,小型MCを2台一組で利用し,加工スピードをさらに高めている。

1年で生産性を3倍に

加工を終えたパワーステアリング部品
加工を終えたパワーステアリング部品
多くの締結個所に傾斜があり加工条件は厳しいが,工程設計と刃物,治具の工夫によって高速量産加工を実現している。

 東洋パーツの創業は1953年で,自転車の変速ギアの加工からスタートした。その後,自動車部品の切削加工を請け負うようになったが,約10年前までは注文があれば何でもこなす,“相手次第の加工業”だった。

 ただ,「技術力には自信があった」(小菅氏)。特に自社で使用する専用周辺機を短期間で設計・製作し,少ない投資で生産ラインを構築するノウハウは自慢だった。加工後に切粉を除去する洗浄機を自社開発し,約600台販売した実績もあった。

 しかし,その技術力を生かし切れず,当時多かった少量生産では常にコストで苦戦していた。その原因は生産性の低さ。そこで,約6年前に外部コンサルタントに依頼して問題点を探ったところ,機械の加工能力の1/3しか使っていないことが分かった。

 すぐに生産改革に着手した。コンサルタントからは「機械の能力を100%使うことを目標に」と,発破を掛けられた。例えば主軸の最高回転数が1万rpmのMCならば,その最高回転数で加工する,ということだ。「そんなことできるはずがない,という現場からの反発もあったが,やり切らない限り明日はないと思った」と,小菅氏は振り返る。

 だが,背水の陣で方針が決まると社員の動きは早かった。同社の社員は,全体の半数以上が国の技能検定に合格しており,その他の技術関連の有資格者を含めると7割を超える専門家集団。「プロとしてのメンツもあった」(小菅氏)。最高回転数で加工するための加工手順や段取りの最適化,それに合わせたハンドリング・システムの構築,治工具の開発などに集中的に取り組み,わずか1年余りで生産性を一気に3倍にまで引き上げた。

 そして,生産改革に成功した同社に対し,現在の主力製品である自動車用パワーステアリング部品とターボチャージャ部品の量産加工の注文が相次いで寄せられたのである。

はだしで歩ける工場が目標

東洋パーツ社長の小菅哲也氏
東洋パーツ社長の小菅哲也氏

 現在,東洋パーツが重視するのがVM(Visual Management,目で見る管理)と5S活動である。それまでは担当者しか現場の問題を把握しておらず,それが生産性低下の温床になっていた。

 ところがVMの手法を導入することで,大きく変わった。職場ごとの毎日の進ちょく状況や達成度,問題の有無については見える化し,各職場に掲示している。その掲示を見れば現場の状況がひと目で把握できる。現在,このVMと,認証取得済みのISO9001,同14001を統合し,TVM(東洋パーツ・ビジュアル・マネジメント)という管理システムの構築を進めているところだ。

 もう一つの5S活動は「高品質な製品は美しい工場からしか生まれない」という小菅氏の信念に基づくものだ。5S活動を始めてから,従業員の仕事に対する取り組み方が変わってきたという。現在でも清潔で整理整頓されているが,「最終的な目標は,裸足で歩いても足裏が全く汚れない加工工場にすることだ」(小菅氏)。

 管理システムの構築や5S活動には意外な効果もある。自動車メーカーの調達担当者は頻繁に調達先を訪問する。「名目は品質監査だが,実際には工場の管理状態をチェックしている」(小菅氏)。管理システムと5S活動は,調達担当者に清潔で管理が行き届いた工場をアピールする場にもなる。

東洋パーツ
所在地:埼玉県・長瀞町
東洋パーツ 資本金:6000万円
従業員数:175人
売上高:35億4000万円
主要生産品:パワーステアリングやターボチャージャの部品
得意な技術:高速切削による量産加工
主要な設備:マシニングセンタ,NC旋盤,自社製専用機

小菅哲也氏がオススメの中小企業

紹介先:関口工業(所在地:さいたま市中央区)
金属パイプを大きな曲率で曲げる「極小曲げ」やベローズ(蛇腹)成形,ロボット溶接など,多様な金属パイプ加工に対応。近代的な設備と職人技を融合させ,多品種少量加工から量産まで幅広く展開する。
紹介先:内外(所在地:群馬県・榛東村)
アルミ合金を金型鋳造して複雑形状品や高耐圧品を製造する技術。温度管理ユニットやアスピレータ,押し湯切断機なども自社開発する。当社の主力製品の前工程を担う大切なパートナーでもある。
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