ほかにも、下記のような優位性がある。
・低騒音
・建設コストの安さ(車両が軽いため線路への負荷が小さい、車両の気密性が高くトンネルの断面積が小さい(TGVの7割)などの理由による)
・大量輸送(一車両当たりの輸送人数が多い)
総合的な社会システムとしての売り込みを!
優位性はハードウエアのみではない。まずは、安全であること。開業以来45年で事故死者は存在しない。そして、運行が安定していること。ダイヤの平均遅れ時間は1分未満という驚異的レベルだ。鉄道運行のソフト技術がいかに高いかが理解できる。
中国でソフトハウスを経営する知人は「日本のネット系の情報システム技術はともかく、鉄道の管理技術、配電管理技術など社会インフラ系の情報システム技術は格段にレベルが高い。ぜひ中国に技術移転したい」と言っていた。海外に売り込む際には、車両と言うハードウエアだけでなく、運行、保守そして建設といった総合的なシステムで提案した方がよさそうだ。実際、そのようになりつつある。
国際標準化が鍵だ!
このように優位性があるわが国の鉄道技術であるが、意外な弱点がある。それが、「国際標準」となっていないことだ。JRの元役員も「技術水準は高いが、かなしいかな国際標準となっていないものがほとんど。そのため、最適な技術が使えず、わざわざレベルが低い技術を使うことがある」と指摘していた。この10月にカナダに行ったが、カナダに導入された日本の鉄道もカナダ標準(ヨーロッパ標準)に合わせるため、信頼性が低い部品を使わざるを得なくなり、それが原因で故障が生じたとの話を聴いた。
鉄道においても、ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)で定める規格が国際規格として扱われている。わが国では、2000年に「鉄道技術標準化調査検討会」を設置したが、十分な成果は挙げられていない。一方欧州では、欧州地域内直通列車推進のため、欧州地域規格(EN)の策定が進められ、これを国際規格化する動きが活発になっている。つまり、欧州が国際規格を仕切っている状態になっているのだ。
わが国による反撃として、2010年4月に「鉄道国際規格センター(仮称)」を設置することとなっている。国際標準をとり、国内の利害調整から国際的にわが国の利益を確保する役割が、官僚には今後ますます求められる。自分たちも、政治の場から積極的に対応していきたい。
早稲田大学客員教授 参議院議員