確かにスパコンは道具かもしれない。けれども、道具として有用なものなのである。だからこそ、世界で開発競争を繰り広げている。ただ競争するだけでなく優秀なものはちゃんと売れてもいる。各国も、安全保障上の配慮から国産化を進め、実際に調達して使用しているのである。

総合的な分析評価を

 ひるがえって国内では、菅大臣が「政治的に決着をつける」と発言している。もちろん最後は政治的な判断になるのだろう。だが、バランスとか世論とかを考慮した政治的な思惑だけでなく、やはりきちんと技術の波及効果、応用における経済効果なども分析評価する必要があるはずだ。本来であれば科学技術の総合的な戦略をつくり、その中でスパコンをどう位置付け、どの程度の予算をつけるかを判断すべきなのである。ただ、時間がない。早急に科学技術政策の研究者を5,6人も集め、2週間くらい缶詰になって調査分析すべきだろう。そうすれば、コスト/パフォーマンスの分析まではかなりの精度でできると思うのだが。

 今回の事件は、自分を見つめ直すいい機会だったと思う。応用、さらには事業化という視点が欠けていたのではないかということを、再検討すべき好機である。そのチャンスをぜひ活かしたい。ただ内部の声、外部の声を総合して「政治的決着」をはかるのではなく、科学技術の視点、さらには「産業と経済」の視点で評価し直し、それを公開し、納税者が納得できる手続きを進めていくべきだと思うのである。

藤末 健三(ふじすえ けんぞう)
早稲田大学客員教授 参議院議員
1964年熊本県生まれ。86年東京工業大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に行政官として入省。95年マサチューセッツ工科大学経営学大学院に留学、96年には同大学院とハーバード大学行政政治学大学院で修士号を取得。99年東京工業大学で学術博士号(Ph.D)を取得し通商産業省を退く。同年東京大学大学院工学系研究科専任講師に就任、2000年から同総合研究機構助教授。04年民主党参議院選挙に比例区で当選する。早稲田大学客員教授。公式ブログはhttp://www.fujisue.net