「次世代スパコン・プロジェクト」が復活しそうなワケ
なぜ世界一を目指すのか
事業仕分けでも同様に、「世界一を目指す必要があるのか」という質問が出ていた。これはもっともな意見だ。
2009年11月のスパコンのTop500リストでは、トップはJaguar - Cray XT5-HEで1.76PFLOPSである。実は、6月のトップは、IBMのRoadrunnerだった。スパコンの性能トップはどんどん変わっている。世界一になったとしても長い間それを維持することは難しい。このことは、世界レベルの性能競争がいかに激しいかを物語っている。
競争が激しいということは、多くのプレーヤが世界一を目指してしのぎを削っているということである。その大きな理由は単に「名誉なことだから」などということではなく、スパコンのトップ争いに加わることでコンピュータの先端技術を維持・向上することができると多くの国や組織が考えているからだと思う。たとえばそれば、プロセサ技術、半導体技術、高密度実装技術、OSなどのソフトウエア技術といったものだろう。
私は、今から20年近く前になるが、通産省(現経済産業省)でコンピュータ担当の係長をしていた。その時に某メーカのスパコン製造と同じ工程を見せていただいた(そのものの工程は機密で見せてもらえなかった)が、そこで駆使されている製造技術、冷却技術、多層実装技術などを見て、そのレベルの高さにおどろいた記憶がある。とてもその技術蓄積を一朝一夕でやり遂げることなどできないだろう。
この技術の蓄積を維持し、さらに発展させていくべきだと思う。そのためのプロジェクトであるべきなのだが、本当にこの巨大プロジェクトが技術を維持・発展させる最適な方法なのかどうかがよくわからない。この検証は確実にしなければならない。そのうえで、「本当にムダ」なのかという判断を下すことになるのだが、この判断は、「ムダ」をどうとらえるかという問題でもある。その際、長期的な科学技術戦略がなければ、議論はどんどん主観的、感覚的になっていく。拠るべき戦略がなければ、何をムダ、何をムダではないと客観的に種別することなどできないのである。
世界一を実現できるか
こうした手続きを経て、もしこのプロジェクトが続行されれば、次世代スパコンは現在トップのJaguar - Cray XT5-HEの性能の約6倍を目指すことになる。しかしながら、この夏、NECと日立製作所がプロジェクトから離脱し、富士通が単独で続けることになった。富士通はこれまで0.1PFLOPS程度しか達成した実績がない。つまり、単独で自己記録の100倍に当たる性能を実現しなければならないのである。相当、大変なことだと思う。
しかしながら、過去の大型コンピュータの開発の歴史を見れば、飛躍的な性能向上はこれまでずっと持続されてきた。飛躍的性能向上=半導体の進歩(ムーアの法則)×インターコネクション実装の進歩×命令処理方式×処理並列化である。それを検討したうえで設定した目標なのだから、達成は可能なのだろう。
けれども「目標を達成してもトップになれない」という心配はある。これは相手あっての話だから、何とも予測がしにくい。
さらに、大事なポイントがある。いくらハードの性能が高くなってもそれを利用するためのソフトウエアがなければ意味がない。トヨタがF1から撤退したが、特殊なサーキットでしか走れない車は必要なくなっている。これと同じように、特殊な用途にしかつかえないスパコンになってしまっては、その存在価値を示すことが難しい。
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