これは、個々の顧客とのリアルタイムの対話が共有化されることで、企業のみならず、関係する顧客全体が進化し、企業の資産として蓄積されていくことを意味する。その資産は、販売力を構成する大きな要素になっていく。企業と顧客の対話が丸見えになる状況は、さらに上流の商品開発や企画にもいずれ大きな影響を与えることは想像に難くない。

 Twitterのようなサービスを利用したリアルタイムの口コミ活用によって、企業と顧客の対話と同時に、もう一つ丸見えになるものがある。顧客同士のつながりだ。誰の発言が誰に影響を与え、情報が伝播していく経路が分かるようになる可能性があるのだ。

24時間で11万人にリーチ

 Twitterを使って、ニコンが2009年8月4日に発表した小型プロジェクター内蔵のデジタル・カメラ「COOLPIX S1000pj」の口コミ伝播を追跡した。

 この新しいコンセプトのデジカメについて書かれたTwitterのつぶやきは、製品の発表日の前日夜から始まっている。翌日の発表内容をリーク情報として写真付きで掲載したWebサイトがあったようで、「これ、信じていいの?」「うわさは本当だった」といった情報が投稿され始める。カメラ愛好者に影響力のあるユーザー群を介して、うわさベースのつぶやきが翌日の朝にかけて増えていく。

 そして翌日。正式発表に呼応してつぶやきが急増し、数千~数万のフォロワーを抱える影響力の強いTwitterユーザーや、Twitter内で注目されているキーワードを自動抽出するサービスなどが、さらにそれを多くの人に伝えた。ほぼ1日で情報伝播の広がりは収束に向かったが、24時間の累計で約11万人ほどのユーザーに新製品情報が伝わった。このスピードは目を見張るものがある。