今年の夏に自分のブログのアクセスログを解析していて、ちょっと驚いたことがある。直近の数カ月間に検索エンジン経由でブログを訪れた読者が、どんな検索キーワードでたどり着いたか調べてみた。なぜか「Twitter、メッセンジャー」というキーワードの組み合わせが最も多かった。

 すぐには理由が分からず、首をひねった。最近話題のミニブログ・サービス「Twitter」については、この連載でよく取り上げるけれど、自分のブログではあまり書いたことがない。普段は、経営する会社の事業と関連する技術やサービスの記事を多く投稿している。

 不思議に感じて、ブログを訪問した読者が読んだ記事の内容を調べ、思い出した。その記事は、2年以上前の2007年7月に書いたものだった。当時は、ちょうどTwitterが日本の先進的なIT関係者たちから注目を集め始めたころで、WindowsメッセンジャーやYahoo!メッセンジャーを使って、Twitterにつぶやきを投稿したり、友人のつぶやきを閲覧したりできる新サービスを実験公開したときだった。

ネット上の知恵を商品力に

 記事の内容は、そのサービスに関するもの。ワケあって、今はサービスを非公開にしているので、自分が投稿した記事の存在を忘れていた。ログ解析のおかげで、Twitterユーザーが増える中、Twitterとメッセンジャーの融合サービスのニーズが最近高まっていることが分かった。同時に、自分が想定していた読者に対して価値のある記事の内容と、読者が読みたいと思う記事の内容にはギャップがあるものだと妙に感心した。

 企業と顧客の間に横たわるギャップは、すべてのビジネスに存在する。「これこそ、ユーザーが求める価値」と信じ、意気込んで開発した製品が、いざ市場に投入してみたら意外にニーズからずれていた。そんながっかりの経験をした読者は少なくないだろう。

 私がログ解析でニーズのずれに気付いたように、最近は、インターネット上の口コミ・サイトに書かれた消費者の声に耳を傾けようとしている開発者も多いに違いない。開発した商品の評判が気になって、価格比較サイトなどをチェックした経験はないだろうか。今や、ネット上に散らばる多くのヒトの知恵が“商品力”の一翼を担う時代になったのだ。