先週(2009年10月23日に)台湾の新竹サイエンスパークを訪問しました。私は新幹線で台北から行きましたが、所要時間は30分くらいです(サイエンスパークの地図)。

 この地を訪問したのは10年ぶりでした。十年一昔といいますが、想像以上の変貌ぶりでびっくりしました。

 サイエンスパーク内の雰囲気は、濃縮されたシリコンバレーといった感じです。つまり、シリコンバレーを移動していると所々に見かけるベンチャー企業が隣同士に並んでいる雰囲気です。

 10年前はそれほどきれいだと思わなかった社屋も、今ではほとんどがシリコンバレーのビルのような、洗練されたデザインのビルになっていました。

新竹サイエンスパークとは?

 そもそもこの新竹サイエンスパークの構想が持ち上がったのは1973年のオイルショックがキッカケだったといいます。当時の政府高官が指揮を執り、それまでの軽工業に代わり、付加価値が高いハイテク産業を興すべく時間をかけてプランを作り、一気に進めたと聞きました。設立は1980年、今までの政府投資金額は累計2205億円にのぼります。

 その結果、現在(2009年7月時点)ではパーク内に451社が集結し、12万8000人の雇用を生んでいるのです。これら451社の2008年の売り上げを合計すると3兆円。7割が半導体、2割弱が太陽電池関連で、なかでも太陽電池関連の成長が顕著なようです。

 その新竹サイエンスパークを支えるのは、周辺にある大学や研究機関です。清華大学(北京にも同じ名前の大学がありますが、まったく別の大学)、交通大学、新竹師範学院、中華大学、玄奘大学、財団法人工業技術研究院(日本の産業技術総合研究所と同様な組織)、財団法人食品工業研究所、国家高速情報センター(スパコン)、同時輻射線研究センター、国家宇宙実験室、精密儀器センター、CHIP 設計製造センターなど、科学技術の研究開発を支える人材や機関が整備されています。

 アメリカンスクールも設置されています。米国で研究開発などに従事していた中国系の人たちを呼び戻す際に障害となる「帰国子女」の教育問題に配慮したものです。

新竹にあって日本にないもの

 もちろん、わが国にもサイエンスパークはたくさんあります。というか、アジアにおけるサイエンスパークの本家は日本ではないかと思うのです。私は大学教官時代にサイエンスパークの調査を実施したことがあり、わが国の成功事例と言われる「かながわサイエンスパーク」には何度も伺いました。