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コラム

変換効率35.8%のシャープの太陽電池,コスト1/10,効率40%も視野に

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2009/10/26 09:00
河合 基伸=日経マイクロデバイス
セル変換効率35.8%(非集光)を達成
セル変換効率35.8%(非集光)を達成
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短絡電流(Isc)12.27mA,開放電圧(Voc)3.012V,曲線因子(F.F.)85.3%。産業技術総合研究所で測定。
短絡電流(Isc)12.27mA,開放電圧(Voc)3.012V,曲線因子(F.F.)85.3%。産業技術総合研究所で測定。
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逆積み形成法を適用した
逆積み形成法を適用した
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2025年にセル変換効率40%を目指す
2025年にセル変換効率40%を目指す
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 「内燃機関の効率に近付いた。変換効率50%を超える夢の太陽電池の実現に向けて,大きなブレークスルーだ」(シャープ)。シャープは,太陽電池の変換効率の最高値を更新して,35.8%を達成した(関連記事)。1000倍で集光すれば,45%を実現できそうだ。
 既に同社の技術者たちは,次の開発に向けて動き出している。目標はコスト1/10,非集光時のセル変換効率40%超である。40%超に向けた研究開発を加速するのは同社だけではない。究極の太陽電池に向けて,技術開発競争が活発になってきた(日経マイクロデバイス11月号では特集「究極の太陽電池」を掲載予定です)。

 これまでの最高値は,2007年に米NREL(National Renewable Energy Laboratory)が記録した33.8%だった。集光した場合の最高値は,米Spectrolab Inc.が2009年10月の学会で発表したばかりの41.6%である。シャープの今回の成果を含め,いずれも3接合タイプの化合物多接合型太陽電池で実現している。

 太陽電池の変換効率を極限まで高めるには,異なるバンドギャップを持つ材料を組み合わせて,幅広い波長の光を余すことなく利用する必要がある。従来シャープは,作りやすさを優先して格子定数の近い組み合わせで材料を選んでいた。つまり,トップ・セル(3接合構造の上層)がInGaP,ミドル・セル(同,中層)がInGaAs,ボトム・セル(同,下層)がGe,基板がGeだった。

 今回シャープは,バンドギャップの最適化を優先して,ボトム・セルをGe(バンドギャップが0.67eV)からInGaAs(同0.97eV)に変更し,InGaP(トップ),GaAs(ミドル),InGaAs(ボトム),GaAs基板の組み合わせで挑んだ。こうすることで,トップ層からボトム層にかけて順番に,短波長から長波長の光を有効に発電に利用できるようになる。

逆から積層して課題を解決


 課題は,InGaPの格子定数と,GaAs基板やほかの層の格子定数が大きく異なることである。それでは結晶欠陥などが発生してしまい,高い効率は望めない。そこでシャープは,従来とは成膜の順番を逆にして,GaAs基板と格子定数をほぼ一致させることができるInGaP(トップ)から順番に成膜する「逆積み形成法」を適用して解決した。格子定数が異なるGaAs(ミドル)とInGaAs(ボトム)の間には,バッファ層を挿入して欠陥の発生を抑制した。バッファ層には,透過波長を考慮してトップ層と同じInGaPを使っている。

 逆積み形成法によって,InGaP(トップ)から順にInGaAs(ボトム)まで積層した後は,3層をGaAs基板から切り離してInGaAs(ボトム)層を下にしてSi基板上に転写する。こうすることで,InGaP層を表面側に配置できる。Si基板とは「ハンダのような材料」(シャープ)で接合している。

 今回の手法は,高効率化だけでなく,将来的にはコスト削減にもつながるという。GaAs基板から切り離す工程は現在,GaAs基板を削り取るなどの手法を用いている。これを将来は,剥離用の層を挟む手法や,剥離したい部分へのイオン注入を利用する手法などによって実現できれば,GaAs基板の再利用が可能になる。GaAs基板は非常に高価なため,この手法が実現すればコストを大幅に削減できるとみる。
 こうした改良によって,「結晶Si型よりも2ケタ高い」と言われている製造コストを,現在の1/10まで下げられるという。現在の用途は人工衛星などにとどまるが,コストが下がればそのほかの用途へも広がる可能性がある。

 変換効率の向上は,まだ止まらない。シャープは,2025年にセル変換効率40%,1000倍集光時の変換効率が50%という驚異的といえる太陽電池を開発する計画である。InGaAs(ボトム)の下に新たな層を追加した,4接合タイプの化合物多接合型で実現するという。製造方法は,今回と同じ逆積み形成法である。新たな層の候補としては,バンドギャップの異なる材料のほか,量子ドットを活用してバンドギャップを制御した層が考えられるという。

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