われわれが10月に発刊した「季刊 LCD用ガラス基板調査レポート」の掲載データに最新市況を織り交ぜて,液晶パネル用ガラス市場展望を語りたい。

 米Corning Inc.の台湾・台中工場で10月19日の日曜日に電力障害が発生した。電力供給が遮断されたことにより,いくつかの溶融窯で温度が低下し,ガラスが窯の中で固まってしまった。Corning社は被害の状況について,「現在調査中」(22日時点)と発表している。

 ガラスの溶融窯のメンテナンスとしては,温修(hot repair)と冷修(cold repair)がある。温修は窯の熱を維持したままの修理であり,比較的短期間で修理は終了する。冷修は窯の熱を落とした上で,耐火レンガを取り替える必要がある。窯の容量により修理の期間は変化するが,Corning社の1窯当たりの生産能力は他社と比較して小さく,2~3カ月を要する。今回の事故では,冷修が必要と推測される。

 同社Vice Chairman and Chief Financial(副会長兼CFO(最高財務責任者))のJames B. Flaws氏は,2009年第4四半期(10~12月)の出荷量見通しを,当初の前期比5%増から横バイもしくは微減に下方修正した。詳細は発表を待たなければならないが,電力供給のバックアップが機能しなかったことについては,原因の解明と対策が求められる。

パネル・メーカーへの影響は?

 冒頭のレポートによると,TFT液晶パネル用ガラス基板は2009年弟2四半期以降の急激なパネル市況の回復に対して,不足あるいは逼迫(ひっぱく)した状況が続いてきた。懸念されるのは,パネル・メーカーへの影響である。しかし,第4四半期は,クリスマス商戦向けの生産が終了する季節変動により,パネル需要が前四半期比で11%の供給過剰へと緩和するとわれわれは予測している。このパネル需給緩和の傾向の中で,業界全体では,今回の事故の影響も解消されると考えている。

 ただ,短期的には,Corning社の台中工場が直接供給していたパネル・メーカーへの供給のバックアップは,同社1社では困難と考えられる。従って,旭硝子や日本電気硝子との交渉が必要となるため,混乱が予測される。また,パネル・メーカーが必要以上にガラス基板を発注する可能性が高く,パネル・メーカーのパワー・バランスにより,必要量を確保できないパネル・メーカーが出てくる可能性はある。