韓国のディスプレイ関連の国際会議「IMID(International Meeting on Information Display)」(10月12~16日,KINTEX)で発表された論文の内容について,筆者の目から見た全体動向をまとめる(すべてのセッションは網羅できないため,分野がある程度限られていることをご承知願いたい)。今年は目玉となるようなパネルの発表はなかったが,次世代FPD製造技術に関する地道な研究成果が数多く発表され,興味を引かれた。特に酸化物TFTに関する発表は件数も多く,内容も多岐にわたり充実していた。

酸化物TFTの発表が充実

表1 IMIDで発表された主な次世代TFT(有機TFTは除く)
表中のSMDはSamsung Mobile Displayの略。著者が作成。
[画像のクリックで拡大表示]

 表1は,IMIDで発表された主な次世代TFTの一覧である。なお,今回のIMIDでは有機TFTの発表も多かったが,まだ量産を議論する段階には達してないと筆者はみているので,この表からは除いてある。

 特に発表件数が多かったのが酸化物TFTである。その材料としても,従来のIGZO(In-Ga-Zn-O)だけでなく,様々な材料で試作した報告を聞くことができた。例えば,Inを用いないAZTO(Al-Zn-Sn-O)などでも良好な特性が確保されており,酸化物TFTの材料選択もまだ議論の余地がありそうである。そして,これらの新しい酸化物TFTの特性が,基調講演で韓国Samsung Electronics Co., Ltd.が示した「a-Si TFTの一ケタ以上の移動度」という“次世代液晶パネル用TFT基板の要求値”を,まるで申し合わせたかのように見事に達成しているのが面白い。試作では有機ELパネル用途の例が多いが,次世代液晶パネル用のTFT基板としても十分使える可能性がある。