最初は、テストを受けながらお金について勉強するだけなのだが、進めていくうちに、ゲーム内で給料が出てお金がたまるようになる。そうすると、お店に行ってゲームのクリアに必要なアイテムを買う機能が登場する。さらに、昇進試験を受けたり、株券を売買したりできる機能も徐々に加わる。

 もし、「テストと勉強」「買い物」「株式売買」「昇進試験」と、最初から盛りだくさんの機能があったら、マニュアルを見る必要が出てくる。最初のハードルが高いと、使いたくなくなってしまうだろう。使っていくうち、より高度な機能が登場し、それに徐々に慣れさせる。このユーザーを教育する概念をソフト設計で組み込んでいる。

テレビにコーチングを組み込めるか

 では、ゲームの世界では当たり前になっているコーチングの概念を、テレビのリモコンに組み込むことは可能だろうか。

 電源が切れているときの電源オンについては、前述のUIと同じだ。違うのは、そこから先だろう。

 例えば、購入後すぐには、限定された機能のボタンだけをリモコンの液晶画面に表示する。電子番組表の閲覧ボタンなどはいらないだろう。ユーザーの利用時間がある程度経過した後で、番組をザッピング視聴していると、テレビ画面の隅に吹き出しが現れて「電子番組表という便利なものがありますが、見てみませんか」とテレビが問い掛けてくる。ユーザーは、その段階で初めて電子番組表という機能を知り、接触し、その利便性を体感する。それ以降はいつも、チャンネル・リストの中に電子番組表を表示し、ユーザーが利用できるようにするのである。

 また、DVDなどを視聴する際には、リモコンに「スタート」「停止」「早送り」「巻き戻し」というボタンしか表示されない。ただ、何度も、長時間に渡って早送り機能を使うユーザーには、早送りボタンを押した際に、2倍速や3倍速といった倍速機能の選択肢が現れるようにする。

 これは、ちょっとしたアイデアである。以前、このコラムで紹介したように機械がヒトに物事を推薦する機能は、うまく使わないと「気が利くもの」ではなく、「押し付け」になりがちだ(参考記事はこちら)。テレビ開発者ならば、もっと優れたアイデアを思いつくかもしれない。