もちろん、開発コストなどの制限はあるだろうけれど、もう一段進化してもいいはずだ。例えば、時と場合に応じて機能を出し分けるリモコンである。

 米Apple社の携帯電話「iPhone」のようなタッチパネル付きのリモコンをイメージしてほしい。テレビの電源が付いていない時には、リモコン上には、電源オンのボタンだけを表示する。ユーザーが次に取る行動は、ほぼテレビの電源を入れることだけだから、それに合わせてボタンを表示するわけだ。

 では、テレビの電源を入れた後にユーザーが行なうことは何か。ほとんどの行動は、「チャンネルの変更」「音量調整」「DVDなどの操作」「電源オフ」に集約される。もしかすると、「見ているチャンネルの詳細情報の表示」くらいはニーズがあるかもしれない。せいぜいボタンが五つあれば事足りる。

 もし、ユーザーがDVD再生のボタンを押したら、「スタート」「停止」「早送り」などDVDを見る時に必要なボタンに表示を切り替えればいい。ユーザーが次に取る行動を予測して、それに必要なボタンだけをユーザー合わせて表示するのだ。

利用動向に合わせ、姿を変えるUI

 ユーザー行動を予測するUIは、リモコンに限らず、携帯電話のように画面が小さな機器で効果が高い。実際に、携帯電話の装飾メール・サービス(メールをカラフルに彩る素材画像のダウンロード・サービス、いわゆるデコメ)を提供する企業と組んで実験したことがある。

 その企業の装飾メール・サービスでは、トップ画面に検索機能や20種類近くの素材画像のカテゴリーへのリンク、人気ランキングへのリンクが並んでいた。

 携帯電話は画面に制限があるので、それぞれのサービスを縦にずらりと並べざるを得ない。だが、ユーザーが一番使いたい機能が、最も下にランク付けされていたらどうだろう。ログインして、下にあるメニューにたどり着くために、画面をずっとスクロールしなければならない。これは結構面倒な作業だ。

 そこで、ユーザーごとのサービス利用履歴を使って、これを改良した。機能やリンクを表示する順序を個人の利用形態に合わせて変更するようにしたのである。

 具体的には、素材をいつも検索して探すユーザーには、検索機能を最も上に。いつも「彼女に送る」というカテゴリーで素材を探し、検索機能をほとんど使わないユーザーには、「彼女に送る」を一番上に表示し、検索機能を最も下に自動的に配置する。