「最先端研究開発支援プログラム」は、麻生政権の下に「景気対策の一環」として作られました。総額2700億円の研究基金を作り、30のプロジェクトに1件当たり3~5年間で30億~150億円を助成するものです(採択プロジェクト30件はhttp://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/senteikekka.pdfに、応募プロジェクトは565件)。

 そもそも本プロジェクトの企画案は、経済界(経団連)から提言されたと言われています。実際に経団連の提言書には「世界最先端研究支援強化プログラム」(仮称)という名称が書かれています。さらにいえば、本プログラムについての国会審議では、民主党が景気対策ではなく「科学技術研究の振興」を目的とすることを条件に賛成し成立し、プログラムが成立した経緯があります。

 このプログラムの制度にはいくつか新しいところがあります。まず、基金を作り、通常年度ごとに研究予算を執行していたものを複数年度で計画的に予算を使えるようにしたことです。研究の事務処理を外部に依頼できるようにも工夫されています。これは研究をスムーズに進めるためには大きな効果があると私は思っています。

「最先端研究開発支援プログラム」の問題点

 しかしながら、数々の問題点も指摘されています。まず、総選挙が終わり、民主党政権の確立が決定した後の、政権移行期である「9月4日に麻生政権下で採択プロジェクトが決定された」ところ。民主党はそのタイミングについてクレームをつけました。

 採択プロジェクトが決定した後、本制度には直接関係がない私のところにも数多くの研究者や関係者から問題を指摘するメールが入りました。直接私の事務所まで来られた方も何人もいらっしゃいます。

 こうした話をまとめると、

(1)すでに十分な研究費をもった研究者に研究費が集中しすぎ。若手研究者に研究費を回すべき。著名な研究者に数十億円の研究費が集まると、その研究者に多くの若手研究者が集まらざるを得ず、若い研究者が新しいテーマに挑戦する機会を逆に奪ってしまう
(2)巨額の研究費の配分を決めるにしては審査手続きが不十分。実際、相当な労力を使い申請書を書いたのに数十分くらいの審査で終わった。審査委員が研究分野の専門家ではないことも問題
(3)研究費が大きすぎて、研究費がずさんな使われ方をするのではないか。例えば、研究評価は総合科学技術会議が実施することになっているが、これでいいのか疑問。プロジェクトを選択した組織が、自分自身が選択したプロジェクトを失敗だと評価するはずがない
の3点に問題点はまとめられるように思います。