この数カ月の間に、経団連、経済産業省、そして政党(選挙用マニフェスト)がイノベーション政策を打ち出してきた。反省を含め、今回はそれらを解きほぐしてみていきたい。

反省、反省の民主党マニフェスト

 まずは、政党、特に政権党になった民主党のイノベーション政策。マニフェスト(政策インデックス)にはこう書いてある。

イノベーションを促す基礎研究成果の実用化環境の整備

2008年の169回通常国会で超党派で成立させた研究開発力強化法の趣旨を踏まえ、今後とも科学技術を一層発展させ、その成果をイノベーション(技術革新)につなげていきます。

産学官が協力し、新しい科学技術を社会・産業で活用できるよう、規制の見直しや社会インフラ整備などを推進する「科学技術戦略本部(仮称)」を、現在の総合科学技術会議を改組して内閣総理大臣のもとに設置します。同戦略本部では、科学技術政策の基本戦略並びに予算方針を策定し、省庁横断的な研究プロジェクトや基礎研究と実用化の一体的な推進を図り、プロジェクトの評価を国会に報告します

また、素粒子物理学や再生医療等の巨額な予算を要する基礎科学研究分野において今後もトップランナーの地位を維持していくためにも、世界的な研究拠点となることを目指して、欧米やアジア諸国との連携強化に積極的に取り組んでいきます。

 実は、私も民主党科学技術政策ワーキングチームの一員で、この政策を書いた張本人の一人である。けれど、こうやって読み直すと、もっときちんとした政策をかけなかったのかと、身の縮む思いがする。学術振興の色が強く、それをイノベーション、さらには最終目的である産業競争力につなげるためのしくみ作りという点で、具体性を欠くからである。弁解を許していただけるなら、このような政策しかできなかった理由があったのである。一つは、文部科学関連の政策としてこれが書かれたということ、そして予算増を伴う政策は打ち出せなかったことである。

 当時、私は総合科学技術会議と知財本部、そしてIT戦略本部を一緒にして「イノベーション戦略本部」を作ることを提案していた。しかし結局は、「科学技術」を標榜することになってしまった。