日経ものづくり編集部からのお知らせ
本コラム著者の笠原隆氏は,2009年8月5日にお亡くなりになりました。本記事は,ご遺族の方の了解を得て掲載するものです。

 前回は,一般社員のモチベーション向上をテーマにしました。今回の対象は管理職です。引き続き今回も「経営者の視点」で管理職のモチベーションを高めるにはどうすれば良いのか考えてみましょう(なぜ経営者の視点なのかについては,前回参照)。

 モチベーション向上の対象者が一般社員の場合と管理職の場合では,手法が異なります。管理職は,経営者からの要請により自らが社員を動かす役割を担っています。一方で,社員からの要望や要求を受けて,経営者の要請と現場のギャップを埋めるという仕事も課せられています。端的にいえば,板ばさみの状態にいるのです。

周囲の声に耳を傾ける

 その管理職の方々にとって,心理的にプラスに働くのが「気づき」です。日ごろ忙しく仕事に飛び回っていると,つい身近で起きていることを見過ごしているからです。足下の状況が見えてくれば,やるべきことも分かるので,モチベーションが向上します。ただし,そのためには,部下や上司,社外の人からの「率直な声」に耳を傾けられる「素直さ」が管理職の方々に求められます。

 では,具体的な手法を以下に挙げていきます。

(1)相互評価

 管理職同士の評価,部下から管理者への評価,上司から管理職への評価といった形態があります。管理職に対して「良い点」「悪い点」「こんな管理職になってほしい」などの内容を無記名で挙げていきます。周囲の“本音”に触れることが目的です。また,それだけで終わらせず,その内容を管理職の皆さんで十分に議論し合い,まとめていきます。このとき,プライベートな話題の扱いには配慮が必要ですので,十分に注意してください。

(2)ビデオカメラ研修

 管理職5~7名で一つのチームを編成し,ビデオカメラを支給します。繁華街で全く見知らぬ人(10人程度)に声を掛け,「管理職や上司に望むこと」「あなた自身のモチベーション向上法」などを聞き出していきます。その様子をビデオカメラで撮影します(肖像権の問題があるので,必ず撮影の目的や使用範囲を説明して,許可を取るようにしましょう)。録画した内容を見て,会話の要点を整理し,自分たちの意識と比較します。これも十分に議論し,内容を整理してまとめましょう。

(3)役員主催の食事会

 仕事上では役員と接することが多い管理職も食事を共にすることは少ないと思います。役員が分担してチーム別に食事会を開催するのも手です。役員が気楽に管理職に話し掛けるきっかけにもなるでしょう。

(4)プロジェクト活動

 チームごとにテーマ,目標,期限を決めて行います。同じテーマや目標で競争するのも良いでしょう。

(5)モチベーション向上策の考案

 部下のモチベーションを上げる方法を管理者に考えさせて実行させます。プロジェクト活動に参加している部下に対し,活動時間の捻出,活動環境の整備,活動の障害の排除といった形で支援させるのです。そのことが,管理職のモチベーション向上にもつながります。

本コラムの記事はこれで最後となります。ご愛読,ありがとうございました。