前回は,話をするときに忘れがちな「前提条件」を紹介しました。今回は,より具体的で実践的な手法に切り込んでいきます。“ぶっつけ本番”で上手に話せる確率はあまり高くありません。話す前の下準備で成功するかどうかが決まるといえます。
私の経験によれば,話し手が事前に押さえておくべき項目として以下が挙げられます〔なお(1)は前回紹介した「前提条件」です〕。
(2)聞き手に提供する内容を明らかにする
大まかに次の2点を明確にします。
- あなたはどんな内容を伝えたいのか?
- 話の目的は何か?
具体的には,次のような内容・目的が考えられます。
[内容]
全体像について話す
部分や過程を話す
細部を説明する
事例を紹介する
歴史/思想/哲学を話す
[目的]
相手を説得する
行動を起こさせる
意識を変えさせる
報告をする
発表をする
教育をする
講演をする
行事の司会をする
(3)話す際の条件を確認する
具体的には,以下の項目が挙げられます。
- 日時(朝/昼/夜,平日/休日など)
- 出席者数(聞き手の人数)
- 話す時間
- 話す回数
- 全体のプログラムと,あなたの順番やあなたの話す内容の位置付け
(4)環境を調べておく
会場やそこで用意されている設備について調べておきます。
[会場の確認]
場所(社内/社外,研修所,ホテルなど)
会場の広さ
出席者数とその配置
[会場設備の確認]
映像設備(プロジェクタ,ホワイトボード,OHPなど)
音響設備
(5)聞き手の情報を調べておく
具体的には,以下の項目が挙げられます。
- 業種
- 役職(社長/役員/部課長/係長/主任/担当者/派遣社員/協力会社/部外者)
- 年齢層
- 男女比
- 聞き手の経験度(初心者/熟練者/指導者/その道のプロフェッショナル)
- 聞き手の大まかな分類(文科系/理工系,ライン系/スタッフ系,理論派/ムード派/体育会系など)
(6)聞き手と話の内容の擦り合わせる
あなたの話を聞いた人が,話の趣旨を理解した上で,行動に移し,成果を挙げられるようにします。話の内容がそれにかなっているかどうかを検証します。具体的には,以下のような項目になります。
- 聞き手が十分に理解できるか
- 聞き手にとって分かりやすいか
- 話の内容が正しい形で表現されているか
- 聞き手が自分に関係のあることとしてとらえられるか
- あなたの熱意が聞き手に伝わるか
- 聞き手に興味を持たせられるか
- 聞き手の不安を取り除けるか
- 聞き手に適度な緊張感を持たせられるか
- 聞き手が意思決定をできる内容か
- 聞き手が第三者に伝えたくなる内容か
- 聞き手が行動を起こしたくなる内容か
今回は,実際に話をする前に押さえておくべき項目を紹介しました,次回は,声の出し方や時間配分など魅力のある話し方を実現するための技術を紹介します。