Liイオン電池のメインプレーヤーはパナソニック,三洋電機,ソニー

 実際のLiイオン電池市場で大きなシェアを占めるのは三洋電機,パナソニック,ソニーであるが,特許情報からみても同3社の注力状況が確認できる。具体的には,Liイオン電池材料及び電池材料(正極,負極,電解質,セパレータ,集電体,外装)のすべてにおいて特許出願件数上位はこの3社が占めている。ただし技術・特許の質を測るPCIでみると,他の企業に上位を譲る技術もあり,技術の面からみると同3社の技術競争力は必ずしも盤石とはいえない。

図2●Liイオン電池の出願人別出願件数シェア(左)とPCIシェア(右)
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パナソニックの競争力を強化する三洋電機

 パナソニックの三洋電機買収が話題となって久しいが,パナソニックの最大の狙いは,三洋電機の世界に誇る太陽電池や充電池事業という見方が一般的にされているようだ。この2社の技術開発状況を各材料分野別に見ると,出願件数ではパナソニックがいずれの分野も三洋電機を上回っている。一方PCIでは,パナソニックが強みを見せる正極材料,負極材料分野に対し,三洋電機は電解質,集電体,外装の分野で強さを発揮している。2社がお互いの技術競争力を補完し合う状況があらわとなった。

図3●パナソニック・三洋電機の電池材料別の出願傾向(左)とPCI傾向(右)
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Liイオン電池分野における注目企業

 Liイオン電池及び電池材料(正極,負極,電解質,セパレータ,集電体,外装)分野において,規模は小さいながらも,キラリと光る技術を有する企業を探ったところ,三菱化学,宇部興産,旭化成,DOWA,第一工業製薬などが挙がってきた。三菱化学,宇部興産,旭化成は出願件数シェアではトップ企業との差があるものの,PCIでシェアを大きく上げており,注目すべき技術・特許を多く保有している可能性がある。また,同3社は複数の電池材料でPCIシェアが高く,Liイオン電池分野において強力な総合電池材料メーカーとなりそうだ。

 一方,DOWA,第一工業製薬は出願件数上位20社には含まれず,技術開発の規模は小さい可能性がある。しかし,技術開発の成果たる特許にPCIの高いものがあり,小さいながらもキラリと光る技術を保有している企業といえる。


    ◎本分析の前提

    【分析対象】
    16,977件
    1985年以降に出願された日本国特許(公開,登録の両方)を対象に検索を実施した。
    リチウムイオン電池及びその電池材料の検索式は,関連キーワード,FT,FIを組み合わせて抽出している。

    【本分析に利用したPCI指標】
    全分析対象特許に対し,「外部からの注目度」に100%のウエイトをかけて各PCIを算出した後,特許ステータスの登録状態には100%,審査請求済みには50%,公開には30%,消滅には0%をかけた指標を利用した。