三菱自動車が「i-MiEV」(Tech-On!関連記事1)を,富士重工業が「プラグインステラ」(Tech-On!関連記事2)をいずれも事業者向けへ販売することを開始した。また日産自動車が2010年発売予定の「リーフ」(Tech-On!関連記事3)のデザインモデルを公開するなど,いよいよ電気自動車を一般消費者が購入できる日も近づきつつある。2009年7月に開催されたカーエレクトロニクスの専門イベント「AT International 2009」では,電気自動車に注目が集まるとともに,次世代充電インフラを構築するベタープレイス・ジャパンの展示したバッテリー交換式電気自動車が注目を集めるなど,インフラ面からも実用化に向けた準備が着々と進んでいる。そうした中,電気自動車やハイブリッド車の性能の鍵を握るといわれる電池技術も,有望技術を巡って企業の動きが活発になっている。その有望な電池技術とはLiイオン電池だ。

 現在,Liイオン電池の用途はノートPCや携帯電話機などの小型機器が主流である。矢野経済研究所が新規の用途として期待する自動車用途は,2012~2015年には本格的に市場が立ち上がると予測するなど,Liイオン電池市場のさらなる拡大への期待が高い(Tech-On!関連記事4)。

 一時は,ノートPCなどに搭載されたLiイオン電池の発火事故が相次ぐなどして,その安全性に疑問が投げかけられ,実用化に対して消極的な向きもあった。しかし現在,ノートPCや携帯電話機などに向けた中小型のLiイオン電池の生産は拡大され,さらには車載向けの生産工場立ち上げが相次いでいる。

 Liイオン電池の生産能力の拡大が活発になる一方で,Liイオン電池のさらなる性能向上を目指した技術開発も進められている。特に有望な用途先として期待されている自動車用途においては,Liイオン電池を搭載した自動車の航続距離の延長や安全性,価格など,解決すべき技術課題の解決に向けた官学も含めた動きが活発となっている(Tech-On!関連記事5)。

 そこで,Liイオン電池に関する,各社の技術開発状況や技術競争力を特許情報から分析した。分析には,公開されている特許情報をもとにして,特許を保有する企業の技術的な競争力を測る指標であるPCI(Patent Competency Index)を利用した。PCIとは,SBIインテクストラが独自に開発したもので,各特許の注目度などを被引用数や情報提供数などのリアクション数により計測し,個々の特許の質を数値化した指標である。

Liイオン電池の技術開発は一段落

 Liイオン電池および電池材料の特許出願数又は発明者数は,1990年代半ばまでは右肩上がりに増えていった。その後は横ばい推移となっており,1990年代半ば頃にLiイオン電池に関する技術開発ペースは一旦落ち着いたようだ。但し,特許出願数,発明者数ともに高止まり推移していることから,各社のLiイオン電池への技術開発の注力が弱まったわけではないと考える。

図1●Liイオン電池の特許出願件数推移
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Liイオン電池のメインプレーヤーはパナソニック,三洋電機,ソニー