7月末に開催された「第20回 マイクロマシン/MEMS展」では,接合技術に関する提案が製造装置メーカーなどから相次いだ。3次元積層やデバイスのパッケージングや異種デバイスの統合に向けたものである。MEMS向けで進化した加工技術としての接合が,ここへ来てその応用範囲を広げている。

 MEMS技術の展示会であるマイクロマシン/MEMS展で,接合技術の提案が相次いだのは偶然ではない。MEMS向けとして進化してきた接合技術の用途が広がりを見せ,接合技術に求められる要件が多様化していることによる。今回提案された接合の用途は,プロセス・フロー別で見ると(1)立体構造の形成,(2)回路や構造体の密閉,(3)同種のウエーハの大容量化を目的とした3次元積層,(4)異種デバイスの融合,(5)ウエーハ薄化時の機械的サポート,(6)ウエーハ切断時の補助,など広い。

LEDやCMOSセンサーが接合技術を進化,プリント基板にも

 デバイス別では,MEMSデバイスの構造体の形成(上記(1)を利用)および封止(同(2))が従来からある用途である。加速度センサーや圧力センサー,SiマイクなどMEMSデバイスの市場が拡大したことによって,接合装置市場も拡大している。このことは,接合技術の進化を促し,張り合わせ精度の向上と低コスト化(高速化)をもたらした。こうした技術進化が,新たな用途を開拓している。

 ここ数年は,NAND型フラッシュ・メモリー・チップの積層(同(3)と(5)),化合物半導体(III-V族ウエーハ)を基板(Siウエーハ)に実装する光/RF/パワー・デバイスの製造(同(4))などの用途で,接合の需要が高まっている。このうちNAND型フラッシュの積層の需要を牽引しているのは,HDD(ハード・ディスク装置)の代替を狙ったSSD(solid state drive)とメモリー・カードである。化合物半導体の実装を引っ張るのは,照明向けに市場の急拡大が進むLEDである。

 (5)のウエーハ薄化向けでは,イメージ・センサーに用途を広げている。ソニーがCMOSセンサーの高感度化手法して量産化に成功したBSI(裏面照射)技術は,フォトセンサー部の裏面を薄化しており,この際に接合を使う。このBSI型CMOSセンサーは,デジタル・カメラやデジタル・ビデオに加え携帯電話機向けカメラにも搭載が見込まれ,この用途が接合技術の新たな先導役になる可能性がある。

 今回のマイクロマシン展では,(6)を利用して,ウエーハを切断するために,切断しにくい基板を切断しやすい基板と接合するという提案が浜松ホトニクスからあった。ウエーハのみならず,プリント基板に接合の応用範囲が広がる可能性を示している。

“加工技術”にデバイス・メーカーが着目

 元来,MEMSは微小電子機械システムのことであり,可動部を備えた微小デバイスを総称することが多い。例えばMEMS加速度センサーは,微小な重りを片持ち梁(カンチレバー)などで構成し,この加速度による動きを検知する。このような構造は主に半導体製造プロセスによって形成するが,一部にMEMS独自の製造プロセスを使う。このMEMS独自の製造プロセスに必要となるのが,MEMS加工技術である。こうしたMEMS加工技術の代表的なものに,Si深掘りのエッチング技術やSiウエーハの接合技術がある。

 MEMS製造装置メーカーは,このようなMEMS加工技術をMEMS向けよりも大きな市場規模を見込める新分野に展開していこうとしている。一方,半導体などのデバイス・メーカーもMEMS製造装置メーカーと同様に加工技術に期待を寄せ始めている。年々コスト・パフォーマンスを向上しているMEMS加工技術は,デバイスの付加価値向上を狙うデバイス・メーカーにとって新たな基盤技術として量産適用しやすくなっているためだ。今回のマイクロマシン/MEMS展で接合技術の提案が相次いだのは,MEMS加工技術に注目しているデバイス・メーカー,それに応えようとする装置メーカーの意向を反映した結果といえる。