図1◎「B4」
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図2◎B4のエンジンルーム
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図3◎B4の後席
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図4◎「ツーリングワゴン」
図4◎「ツーリングワゴン」
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図5◎ツーリングワゴンのエンジンルーム
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図6◎「アウトバック」
図6◎「アウトバック」
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図7◎アウトバックのエンジンルーム
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図8◎インパネ
図8◎インパネ
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図9◎アウトバックの荷室
図9◎アウトバックの荷室
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 富士重工業の「レガシィ」が全面改良され、5代目となった。初代誕生の1989年から、20年目の変貌である。新型レガシィの開発コンセプトは「グランドツーリング・イノベーション」だ。乗る全員が快適に移動できることを目指したという。

 初代レガシィの後に誕生したインプレッサを含め、スバルはこの20年間に走行性能の高さを徹底的に追求してきた。そこに、レガシィファン、インプレッサファン、そしてスバリストと呼ばれる愛好家たちの期待と要求があったといえる。一方で、スバルは一部の好きな人のためのクルマというイメージもつきまとった。

 しかし20年という時の流れによって、初代レガシィオーナーだった人も年齢を重ね、スバルらしい走りの良さは愛するものの、快適さにも期待するようになったのではないかと、5代目レガシィの開発責任者であるスバル商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの日月丈志氏は語る。

 先代レガシィはレガシィ史上で初めて車両寸法が3ナンバーサイズとなったが、新型レガシィは、さらに大型化された。全長で95mm(B4とツーリングワゴン)、全幅で50mm(同)という大幅な拡大である。この寸法は、室内の居住性をまず考え、それを満たした上で決められた結果であるという。

 快適性を高めるため、エンジンの搭載方式も新しくなった。クレードル(ゆりかご)構造と呼ぶ新しい搭載方法は、エンジン/変速機から左右方向に腕を伸ばしたようなフレームを伸ばして、サブフレームに搭載する方法で、エンジンの取り付けスパンを広げることでエンジン振動を効果的に押さえることができるようになった。

 同時に、従来よりも取り付け点を後ろよりにすることで、エンジン/変速機をロール軸近くで支えることができるようになり、振動を抑えやすくした。この二つの変更の効果は、とくにアイドリング時の振動や、加速音の低減に効果を発揮すると同社は説明する。

 実際、新型レガシィに乗ってまず気付かされるのは、静粛性の高さだ。私以外にも、同行の記者が「静かだ」と、感想を述べていた。停車時も、アイドリングストップをしているかのように振動が少ない。車体の拡大による室内の広さと合わせて、レガシィは高級車になったと感じさせる。なかでもセダンの後席に座る雰囲気は、ロングボディの上級セダンのように足元にゆとりがあり、なおかつ面で身体を支える新しいシートがゆったりとした座り心地を伝え、贅沢な気分にさせるのである。

 これだけ豊かさを覚えさせる乗車感覚なのに、走らせると身軽に感じさせるから驚く。ツーリングワゴンとB4に設定される水平対向4気筒エンジンは、排気量を2.5Lに絞り、2.0Lを廃した。自然吸気(NA)とターボチャージャー付きの2種類を用意する。アウトバックには、2.5LのNAと、従来の3.0Lから3.6Lに排気量を拡大した水平対向6気筒エンジンが設定されている。

 パワートレーンに採用した新技術の一つが、チェーン式CVTの「リニアトロニック」である。チェーン式CVTはすでにドイツのAudiが採用しているが、国産量産車では初の採用だ。350~400N・mの最大トルクにも耐えるチェーン式CVTは、当初はNAエンジンのみの採用であるが、将来的にはターボエンジンへの採用も視野に入れているという。

 これが実に効果的に働いて、新型レガシィの速度を軽やかに高めていく。125kW(170PS)のNAで十分と思わせる動力性能である。2.0Lをなくしたエンジン排気量0.5Lの増大は、低回転トルクの増大とCVTの組み合わせにより、実用燃費を従来の2.0Lエンジンに比べ10%以上改善するのが目的の一つだったという。実際、軽くアクセルペダルを踏み込んだだけで素直に速度を上げていく様子を体験すると、燃費も良さそうに思える。

 2.5Lターボエンジンは5AT(一部6MTの設定もある)との組み合わせとなるが、こちらの変速も滑らかさを追求したとのことで、よほど気をつけていないとCVTとの違いを感じないほどよく仕上がっている。

 3.6Lエンジンは、やはり3.0Lに比べ排気量増のゆとりを伝えるが、振動騒音と動力性能両面で2.5Lエンジンの仕上がりがかなりよく、余裕や豊かさを感じさせるため、それとの差が思いのほか実感できなかった。とはいえ、現在設定のないB4に搭載されれば、上級セダンとしてブランド力を高める可能性があるだろう。

 いいこと尽くめのようだが、全長で4.7mを超え、全幅で1.8m近くになる(B4とツーリングワゴン。アウトバックは1.8mを超える)車体寸法は、日本の道路や駐車場の事情では、やはり大柄だと感じさせられる。従来のレガシィオーナーにとってみれば、高級にはなったが、自宅の車庫に入れにくくなったという不便は生じるだろう。

 また、クレードル構造のマウントのせいであろうか、あるいは電動パワーステアリングの影響だろうか、ステアリングホイールを通じてのタイヤの感触が直接的でなく、間にゴムシートでも挟んだような鈍さがある。その分、ゴツゴツとした路面の影響は伝わりにくいが、手応えの希薄さはどうも気になる。

 理想を言えば、タイヤが接地している様子をより直接的に伝えながら、路面の荒れなどはうまく吸収されているという感触が、ステアリングホイールから手に伝わってきてほしい。現行インプレッサから採用を始めた「SIシャシー」が、レガシィではクレードル構造マウントとの組み合わせによって進化した。今後どう発展し、成熟していくのか。実直な技術開発で知られるスバルの日進月歩に期待したいところである。