電子ペーパーは,通常の紙と同様に光源を持たない反射型表示素子で,電源を消してもイメージが維持されるメモリー機能を持つディスプレイを指す。

 大部分の電子ペーパーは,液晶ディスプレイに比べて視野角や解像度に優れ,ガラス/プラスチック/金属/紙など様々な基板上に実現できる。また,製造方法がシンプルで,ロール・ツー・ロール工程による低コストでの大量生産が可能だ。さらに,電力を要するのは表示画像の変更時のみのため消費電力も低いなど,メリットは多い。

 電子書籍端末市場が本格的に立ち上がってきているが,今後は,その他の紙の印刷物である電子新聞や電子雑誌などの表示媒体としても期待されており,市場ポテンシャルは極めて大きい。また,看板や広告板,案内板などのパブリック・ディスプレイとしての適性も高い。

電子ペーパーの市場展望

 電子ペーパー市場は,2008年の約7000万米ドルから年平均47%の成長率で2015年に21億米ドル,2020年には約70億米ドルに達すると,われわれは予測している。このうち電子書籍端末向けの市場は,2008年の約3500万米ドルから2015年に約11億米ドル,2020年には約34億米ドルと,電子ペーパー市場全体の約50%を占め,同市場の牽引役となる(図1)。

図1 電子ペーパーの市場予測(金額ベース)
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 電子ペーパーの需要は,2010年の2000万枚から2020年には約11億枚に達すると予測している。既存のアプリケーション市場では,モバイル・ディスプレイの代替として2010年の800万枚から2020年には3億2000万枚と,年平均48%増で拡大する見通し。また,新規アプリケーション市場では,2010年の1000万枚から2020年には約8億枚まで増加するとみている(図2)。

図2 電子ペーパーの市場予測(数量ベース)
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 電子ペーパー技術は,印刷された紙のような視認性を備えつつ電子的な情報処理を可能とするもので,さらに低消費電力性や柔軟性というメリットから,様々な分野で採用されていくと期待される。