今,皆さんはどのような職種として勤務しているのでしょうか。私の経験を話しますと,現在従事している職種に関連した勉強は当然ながら重要ですが,異分野に関する勉強や情報収集,または異業種の人たちとの交流が今の仕事に大変役立っています。さらに,普段は目にする機会のない雑誌記事や情報が役立ったこともありました。今回は,見方を変えた異分野の勉強について説明します。

年に2回,気楽に雑誌に目を通す

 もうすぐ夏休みです。私は,夏休みと正月休みには雑誌を買い込んで目を通すのを楽しみにしています。その際,普段はほとんど目にしない女性週刊誌,スポーツ誌,ファッション誌,週刊誌などを積極的に集めます。何か目的があって読むわけではなく,コーヒーを飲みながらパラパラと目を通す気楽な感じです。

 普段は目にしていないからなのか,記事の中身や写真がとても新鮮に感じられ,心に残ります。ファッション誌や女性誌は色づかいがきれいですし,今流行のニュースが満載です。流行を先取りする必要がある開発や企画などに携わっている技術者の皆さんも発想がうながされるかもしれません。全く関係のない分野だと思っていたところに,意外なヒントがあるものです。

異分野の交流会に参加しよう

 もう一つお勧めしたいのが,異分野交流会に参加することです。年に数回はこうしたイベントに時間を確保しておきたいものです。特に経営環境が激変している昨今,異業種ではどのような変化が起こっているのか,どのような対応をしているのか,仕事上の変化や個人的な変化の内容を聞くことは,皆さん個人にとっても刺激になりますし,仕事を進めていく上で参考になることも少なくありません。

 こうした交流会で私が耳にしたのは,例えば,スーパーマーケットでは総菜を入れるトレーや包装フィルムの厚さを半分にしてコスト削減をしていたり,居酒屋チェーンでは焼き鳥の串を廃止してコスト削減をしていたりする事例でした。これらの事例はその後新聞や雑誌などの記事で採り上げられていましたが,交流会に参加したことで企業の内部の人から直接,しかもいち早く聞けるのです。自分の所属する業界内に閉じこもっていては,なかなか知ることが難しい情報です。コスト削減は,製造業が先行しているイメージですが,いまやサービス業でも一部では製造業の上を行くコスト削減活動が始まっているのです。

先人も異分野に学んだ

 歴史をひも解いてみると,かつては自動車業界でも生産性を高めるために異分野をお手本にしていました。

 米Ford Motor社の創業者Henry Fordは,組み立てラインの生産性を高めるために,さまざまな業界を視察しました。そして,ある食肉工場でハンガーに引っ掛けられた肉が運ばれる様子を見て,それをヒントに自社の組み立てラインを構築しました。これが世界で初めてのベルトコンベヤによる自動車組み立てラインです。

 1954年春,米Lockheed社でジェット機の組み付けに「ス-パーマーケット方式」を採用して年間で25万米ドルのコスト削減を行ったという新聞記事が出ました。何の変哲もない小さな記事でしたが,これに目を付けた人物こそ,トヨタ自動車元副社長である大野耐一氏です。大野耐一氏をはじめ,トヨタ幹部はすぐ米国に飛び,このス-パーマーケットに見学しました。そうしたところ,このスーパーマーケットには「Just in Time」と書かれた垂れ幕が掲げてありました。そうして「必要な品を,必要な時に,必要な量だけ供給する」というシステムを知ったのです。これを自社の生産システムに生かした結果が,有名なカンバン方式です。

気楽な気持ちで実行を

 今回は異分野の情報をヒントにして,自分の仕事に役立てるやり方を幾つか紹介しました。普段から気楽な気持ちで実行してみてください。きっと役に立つ時が来ると思います。