独自のラミネート構造を開発し事業化

 ソニーとの関係を示す3原則を具体的に解釈すると、「ソニーとは異なる独自のリチウムイオン2次電池を製品化し、能力を最大限引き出す」と読める。この3原則を堅持した結果、生まれたのが正極や負極、セパレーターをシート状にして何層も積み重ねたラミネート・シート・バッテリー(Laminated Sheet Batetery=LSB)だった。正極材料にはコバルト酸リチウムを使っていないという。LSBはソニーなどの大手電池メーカーがつくるシートを巻いた構造のリチウムイオン2次電池に比べて、放熱性が格段に優れていた。一般のリチウムイオン2次電池は発熱しても高温にならないように何重もの安全対策を施してある。LSBは構造面から放熱性に優れていることから、電気自動車などの移動体向けに適していた。充電時間も最短で20分ぐらいだという。

 2000年ごろから電気自動車などの移動体向けの開発を本格化させた。移動体向けでは、2002年に独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の深海巡航探査機「うらしま」にLSBが採用された。この探査機は自律型の深海探査ロボットであるため、電源となる電池がポイントになっている(最近は燃料電池も採用)。

 2003年にエナックスはLSBを搭載した一人乗りの電気自動車「S3」を開発し販売した。FRP(繊維強化プラスチック)製のボディーを載せた車両質量100kgのS3は、出力600kWのDCモーター駆動で1回の充電当たり100~150kmを走る。公道を走る条件は原動機付き自転車としてナンバーを取得することだ。完成品価格は148万円である。

E-BIKE
電動バイク「E-BIKE」

 2003年は同時に、電動バイク向けのLBSとその制御システムを開発し、米国のEV GLOVAL社に供給した。同社は電動バイク「E-BIKE」を開発した。日本ではタカラ(現タカラトミー)が日本仕様に仕上げて一時販売した。

 2005年は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援でLSBを搭載した電動車いすを開発したり、路面電車向けを開発したりした。派生製品としては、小松ゼノア向けに雑草などを刈り取る機器のスターター用電池も開発した。現在は移動体用の電池システムは搭載した移動体製品がヒット商品になっていないため、量産体制はできているが、量産はしていない。

 最近は、ハイブリッド車向けの車載LSBを開発し、市販のハイブリッド車に搭載して走行し、話題を集めた。欧米の自動車メーカーがエナックスに注目し、同社を訪問したり、小沢社長が訪ねたりと接触を続けている。エナックスは日本でよりも海外の自動車メーカーに注目されているようだ。

 ここまでの話では、同社は移動体向けのLSBを事業の主力製品に据えているように感じるだろう。同社のWebページをみるとノート型パソコンや電子機器向けのLSB、その電池パック、ケーブルなどを販売している。社員約70人の企業に成長した同社がリチウムイオン2次電池事業を安定して継続させるには、売れ筋商品を持つことが不可欠だからだ。

2004年に第二の創業で研究開発・製造型に脱皮