■メカニズムによる分類

(1)実効的な性能系
 パンティーも日本刀も、いざ本番という実戦で求められる性能を追及しています。その打ち手は、セクシーなデザインから携帯の英語翻訳機能搭載まで、多種多様ですが、目的と手段の因果関係が合理的に説明できるという意味では同じカテゴリーに分類されます。

(2)気合いの投資系
 一張羅のオーダースーツや、高級腕時計など、大枚をはたいた演出道具です。込められた気合が相手に伝わって欲しいという気持ちも感じられますが、身を削って投資したのだから、対価として成果が回収できるはずだという等価交換の合理的な考え方が裏にありそうです。

(3)統計確率系
 西の方角に黄色を置くとお金が貯まるというような風水チックなものから四柱推命、星占い、あるいはファッション誌にある「知的に見せたい貴女は○○で彼氏をゲット」みたいなハウツーものまで、底通しているロジックは、何らかの統計的解析やマーケティング解析らしきものが根拠として透けて見える類のものです。誰かが体系化した因果律だけでなく、自分だけのジンクスのような物もこの範疇に入るでしょう。

(4)神通力系
 亡き父の形見の腕時計とか、天神様のお払いを受けた合格必勝鉛筆のように、偉大なる存在の魂が込められた品々です。神通力の源泉はカリスマから神様まで様々ですが、ここはスピリチャルな力学の支配する世界。個々のハードの性能というよりは、込められた物語性が重要である、という意味ではブランド品も神通力系の一種かもしれません。

 このように効能が発揮されるメカニズムを並べてみると、概ね(1)から(4)の順に徐々に非科学的になります。別の言い方をすれば、より自助努力的なものから、より他力本願的なものへという並びでもあります。

 普通に考えると、(1)の実効的性能系は技術者の出番です。それぞれの道具が用いられるマーケットシーンで求められるニーズを技術的なスペックに落とし込む翻訳力が求められます。例えばそれは、シルクのように高級感のある光沢の繊維素材技術だったり、高速に翻訳できる電子辞書ファイルだったりします。

 ただ、今回敢えて注目したいのは(3)~(4)の非科学的領域での勝負道具の世界です。因果関係が神様の世界であったり、手相や星占いのように長年蓄積された因果律体系であったりするので、科学の学徒にとっては扱いづらい領域です。

 ここで、スピリチャルと科学との接点を具体的に考えるヒントとして、ジンクスの世界に注目してみましょう。例えば、連続安打記録を更新中の打者や連勝中の監督さん、ひげを剃らなかったり、パンツを変えなかったりします。逆にスランプに陥った時には、好調だった時のパンツを履いてみたりもします。ゲンを担ぐという力学です。科学的根拠は横に置いといて、自分なりに気付いた因果関係を守ってみるという意味では、神の見えざる手への期待です。