2009年3月期、自動車メーカーで黒字を確保したのは、ホンダ、スズキ、ダイハツ工業の3社だけだった。これらのメーカーは小型車や二輪車に強みを持ち、新興国市場で強いのが特長だ。ホンダの場合、アジアやブラジルにおける好調な二輪車事業が業績を下支えしている。国内での販売台数は25%以上落ち込んだが、世界全体では約9%も増えているのである。二輪車事業は、連結ベースで営業利益の半分以上を稼ぎ出したことになる。世界的な不況の中でも、「乗り物」に対する新興国のニーズは依然として旺盛だ。
中国は一人当たりGNI(国民総所得)は2007年現在で2380米ドルである。2030年ころには中国でも高齢化による人口減少が始まるが、そのころになっても1万ドルには届かないとみられている。一方、欧米や日本など先進国における一人当たりGNI は現在でも3~4万ドル台である。何しろ母数が多いので、平均値は低くとも中国には先進国に匹敵する所得を得る人がたくさんいる。しかし、マスのマーケットを考えた場合、「新興国がこのまま経済成長を続けたとしても、欧米や日本と同じような生活水準には達しない」ということは十分に考慮すべきだろう。ニーズの中心が「そこそこの値段で買える車」であることは、将来的にも変わらないのである。
加えて今後は、資源ナショナリズムが顕在化し、石油の安定確保がいよいよ難しくなってくる。世界人口の4割を占めるインドと中国にとっては、できるだけ早く再生可能エネルギーへ移行を進めることが死活問題になってくる。「電気で動く」という要素は選択肢として極めて重要になる。これらの国々が最終的に求めるのは、「そこそこの価格で買える」+「電気自動車」に行き着くのである。
アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー