充電スタンドの事業性に疑問

 二次電池が1分半といった短時間で充電できる可能性が開けてきたことは、電気自動車の未来に極めて大きな影響を与える。まず考えられるのは、自動車に搭載する電池の容量を小さくし、軽量かつ低価格にできる可能性が開けてきたことだ。多少容量が小さくても、その分小まめに充電することで実用上は問題が生じなくなるからだ。

 これに伴って、家庭での充電に加え、外出先でも専用充電器で手軽に急速充電する、というスタイルが一般的になりそうだ。ここで新たなビジネスが発生する。ただし、充電料金は取れたとしてもせいぜい数百円単位になるだろう。ガソリンスタンドのような有人の専用施設を設けるには、単価が低すぎる。電気自動車ではオイルやフィルター交換なども不要になるため、付帯サービスで帳尻を合わせることもできない。

 「電気事業法」の問題もある。現在、電力の小売は厳しく規制されており、基本的には電力会社以外は販売できない。自由化が進む中で電力の小売分野でも規制緩和が始まっているが、他業種が電力を有料で販売するには法改正が必要になってくる。企業や消費者が強く望めば、法改正は可能だろう。だが、あっと言う間に価格競争になるのは目に見えている。ガソリンも差異化が難しい商品だが、電気の差異化はもっと難しい。料金はせいぜい100~200円程度と想定されるから、苦労して参入しても自動販売機を置く程度の収益しか期待できそうにない。

 結論的には充電単独で事業を成り立たせるのは極めて難しい。充電には相当時間が掛ることを前提に、電池を規格化してスタンドで充電済みのものに交換するというアイデアも検討されてきたが、その議論も終止符を打つことになりそうだ。ベタープレイス・ジャパンはバッテリー交換ステーションの実証実験を進めており、業界では話題を呼んでいる。けれどこうした試みも、短時間充電が技術的に実現すれば不要のものになるだろう。

新たなスタイルが生まれる

 現実的なのは、駐車場を持つ業態が集客を目的に「無料で」充電サービスを行うスタイルである。二次電池の容量が小さければ、それだけ休憩で立ち寄る機会も増える。数分間の充電機会を狙って顧客を呼び込み、「ついでに」施設やサービスを利用してもらうビジネス形態が広がると予想できる。

 この有力候補になり得るのは、コインパーキングやコンビニエンスストア、ショッピングモール、ファーストフード、コーヒーショップ、アミューズメント施設などである。今で言えば、コンビニでトイレを借りたり、ファーストフード店で携帯電話を充電するような感覚で、自動車を充電することになるだろう。