自動車業界では、にわかに信じ難いような出来事が今も続いている。長年君臨を続けてきたビッグ3は、今や米連邦破産法11条(Chapter 11)の適用が避けられない状況まで追い込まれている。2年連続で2兆円を超える営業利益を計上してきたトヨタ自動車も、2009年3月期の決算で、一転5000億円もの営業赤字へと沈んだ。エレクトロニクス分野とともに、基幹産業は総崩れという状況になっている。

 こうしたなか、主要メーカーはハイブリッドカーや電気自動車を次々に発表し、その一方で2009年2月からは車載向けの無線ブロードバンドとして期待される「WiMAX」のサービスがいよいよ始まった。自動車産業の今後を長期的視野で予測する『未来予測レポート 自動車産業2009-2025』を執筆、発刊してからまだ9カ月しか経っていないが、その間にもこのレポートで描いた「未来」が次々に現実になっていくのを実感する毎日だ。

 自動車産業編以外にも、これまで複数の『未来予測レポート』を世に問うてきたが、今回のレポートに対する反響は、産業規模の大きさもあってか過去と比べて格段に強烈なものだった。かなり明確に未来イメージを描き、さらにはそれが必ずしも自動車業界にとって歓迎できるものばかりではないから、内容に関してはかなりの反発があるのではと予想していた。しかし、「やっぱり、そうなんだよね」という反応が意外に多かったのは驚きだった。期待や思惑は立場によって違っていても、自動車業界の変化として注目すべきポイントについては、業種や業界を超えて「共通認識」がすでにできつつあるのだろう。そのことを知り、今年に入って予測の「答え」が見えてきたことで、同レポートが示唆した「変化のシナリオ」が決して絵空事でも遠い将来のことでもなく、目の前に迫った現実であることを確かめることができた。

 こうした反応を探る目的でさまざまな企業を巡ったことで、さらなる情報も集まってきた。その結果として、新たにみえ始めたこともある。執筆時には具体化していなかったような新技術やメーカーの動きも出てきた。そこで本稿では何回かに分けて、レポートで描いた未来像を最新情報を加えて再検証し、予測のアップデートを試みてみたいと思う。

大不況は織り込み済み

 まずテーマとして取り上げたいのは、現在のような経済環境が今後どこまで続くかということである。この質問は、同レポートをテーマとした講演会などでも必ず寄せられたものである。そしてこのことが、今後の未来を占ううえで極めて重要な要素となることは言うまでもない。